デビュー25周年記念企画第1弾は、芸術的紙ジャケ!
東宝シンデレラ、講談社ミスマガジンとなり、グラビアやCM、ドラマで人気を集めた後、松本隆+筒美京平のゴールデンコンビによる「卒業」で鮮烈なレコードデビューを果たした斉藤由貴。
青春という名のラーメンからもう25年も経つのですね、としみじみしてしまいますが、今年はそれを記念した斉藤さんのスペシャル企画が目白押しの模様。まず先陣を切って発売されるのが、リマスタリングされ高音質のHi Quality CDとしてよみがえるアルバム復刻です。
ラインアップは、サントラや一部のベストを除く全13タイトル。まずは85年、新発売のカセットテープとの大型タイアップが話題を呼んだファースト「 AXIA(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」から、「 ガラスの鼓動(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」「 チャイム(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」「 風夢(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」「 PANT(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」「 age(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」「 MOON(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」「 LOVE(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」、そして筒美先生の書き下ろしやバカラックのカバーを含む94年の「 moi(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」までのオリジナルアルバム9枚。
次にミニアルバム「ripple」「To You」に12インチの「土曜日のタマネギ/AXIA〜かなしいことり〜」を1枚に収めた「 re-package 3in1(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」。
そして自作詩の歌を集めた「 YUKI’S BRAND(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」やヒット曲網羅の充実盤「 YUKI’S MUSEUM(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」というベスト盤も、アルバム未収録だったボーナストラックをできる限りプラスするという25th Special盤に。
さらには超目玉、初商品化となる86年のコンサートの模様を収めた2枚組「 Poetic Live CD(紙ジャケ+HQCD) 」という内訳になっております。
今回は仕様も含めLP盤に基づいた紙ジャケ復刻になるのだとか。斉藤さんの場合、LPでリリースされていたものは「PANT」までだったそうですが、アナログ時代のものは、CDとLPで曲順や収録曲が違っていましたし、そういう意味では初復刻と言えるものもありますね。LP未発売分の紙ジャケ仕様も併せ、前に出たBOXとは別物という感じでコレクションしたくなる人も多そう。何より、斉藤さんのアルバムは本当に名作ばかりなので、アルバムごとにビジュアルまで味わえる紙ジャケなら感動もアップしそうです。
個人的には最初の2枚はかなり聴き込みましたし、ベスト「 YUKI’S MUSEUM(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」は当時初めて手に入れたマイカーのステレオでよく流しました。筒美先生ということで久々に斉藤さんのCDを買ったのが「 moi(紙ジャケ+HQCD)(仮) 」(「好き!」って先生が誰かに書いた曲のリサイクルのような気がしてならないけど、思い出せません…)でした。
実はワタシの耳に最もこびりついているのは、資生堂ミュージカル「レ・ミゼラブル」の1曲で、斉藤さんがCMでも歌った「民衆の歌」だったりします。いつかフルバージョンで聴いてみたいなあ。
ところで、斉藤さんというと美貌の裏にある茫洋なムードといいますか、聖なる魔性の魅力に満ち満ちていましたよね。内省的で漫研的な自意識過剰ぶりもそうだし、一流の表現者ならではの狂気を孕んだ才能もそうだし。
甘すぎる砂糖菓子でカムフラージュした麻薬のような声も、音符と音符の間で間(ま)をとるような歌い方にしても、螺旋する戒律の棘で自らを縛りつけ、にじむ血潮で書いたような詩も…。感動と苦悩と後悔のため息が出るほど、見る者聴く者読む者をとらえて離さない力がすごいですよね。
そんなことを振り返ってみると、確固とした美学のもとで研ぎ澄まされた麗しいほどの妄想癖や偏執感とか、自他の思考を丹念に考察し、感情と理性を幾層にも重ね合わせたミルフィーユ的気質とか、天才肌の斉藤さんに魅入られ、その禁忌的であるがゆえに甘美で崇高な芸術の虜になっていたことをまざまざと思い知らされます。
と、ワタシも妄想が過ぎてしまいましたが、秘密の花園の入り口で手招きされ思わず足を踏み入れてしまったら、そこは血の池が沸き立つような魔界だった…というような斉藤さんちの世界を経験した人って多いような気がするんですけど。
ともあれ、少女期の斉藤由貴だったからこそ持ち得た極上の資質を、あらためてたっぷり堪能できる25周年アルバム復刻。ワタシも斉藤さんが何食わぬ風に歌う物凄い歌を、あの頃のように自分を持て余し、思い詰めたような顔をして、聴きたいと思っています。
コアなファン以外コンプできないような気がしますし、前のBOXを持っている人はもっとためらいそうですが、限定ということですのでお早めに。アルバムはちょっと…という人や、斉藤さんビギナーの人たちには、今回スペシャル盤となるベスト2種をオススメします。
(2009.5.30)
*25周年記念企画第2弾として 「斉藤由貴デビュー25th記念DVD-BOX」(仮) の発売が決定しました。