財津さんからあなたへ、名曲いっぱいのソングブック!
この10月には小田和正さんやASKA、平原綾香さんらとのコラボによる8年ぶりのニューアルバム「 ふたりが眺めた窓の向こう 」をリリース。いくつになっても万年青年のような爽やかで優しさに満ちあふれたハイトーンを聴かせてくれる財津和夫さん。
物腰も含めその素敵な歳の重ね方にやっぱり憧れが募るなあ、などと思ってしまいますけど、フォークの時代から屈指のメロディーメーカーとしての才能に惹かれているのは言うまでもありません。
そんな財津さんの作品をメーカーの枠を超えて集めたソングブック2タイトルが発売されることになりました。
1枚はビッグヒット「WAKE UP」をはじめ、名曲「一枚の絵」など19曲収録のソロワークスべスト「 財津和夫の曲たち I 〜究極!財津和夫の名曲ここに集結!! ソロベスト〜 」。
こちらもいいんですが、スイセンしたいのがもう1枚の方。他のアーティストたちへの提供曲19曲を集めたという決定版「 財津和夫の曲たち II 〜たくさんのアーティストへの提供曲集〜 」です。
タイトルがなんともスゴイですねえ。どちらも予定されてた仮タイトルの方が財津さんの作品のセンスを感じさせてよかったんですけど…。
それはともかく、財津さんがつくる曲の素晴らしさを最初に自覚したのは、やはり最初にヒットチャートを賑わせたチューリップの「心の旅」や「夏色のおもいで」という人がほとんどでしょうし、「サボテンの花」や「虹とスニーカーの頃」といったヒット曲もよく知られていますが、我々アラフォー世代にとって財津さんの作品といえば、あの「チェリーブラッサム」をはじめ、「夏の扉」「白いパラソル」という81年に放った3連発のナンバー1、聖子ちゃんへの提供曲をイメージする人が多いのではないでしょうか。
松本隆さんが手がける前に、デビュー1年目の松田聖子をニューミュージック寄りへとシフトさせ、アイドルポップスの新しい形が完成していったのも財津さんの最初の功績があってこそだと思いますしね。
収録曲とは関係なく、個人的に財津さんの聖子ソングのナンバー1は「愛されたいの」。財津さんによるシングル「野ばらのエチュード」と両A面扱いだったナンバーでした。
ほかにも全盛期のアルバムには「水色の朝」や「LOVE SONG」といった屈指の名バラード、「流星ナイト」や「星空のドライブ」「未来の花嫁」などのカワユイキラキラポップがありましたし、そしてB面人気作「レンガの小径」など、ホント愛され続ける美しいメロディーがいっぱい。
作家別に分けられた聖子20周年ボックス「SEIKO SUITE」の中でも、財津作品の入ったディスク4を愛聴している人は多そうです。
と、前置きが長くなりましたが、今回の収録リストでは、松田聖子のNo.1ヒットのほか、提供作品としてはおそらく最大のセールスを記録し、長年にわたり泣ける歌としての支持が厚い沢田知可子「会いたい」をはじめ、DA PUMPのISSAのソロ「生きてる途中」、RAG FAIRの「君でなければ」、宇宙飛行士の応援歌として話題を呼んだ平原綾香の「星つむぎの歌」、Do As Infinityのボーカルとしても知られる伴都美子の「東京日和」などがラインアップ。
なぜか提供曲ではない吉田栄作の「心の旅」などのカバーも入ってますけど。
こうして見ると、近年の作品も多くて、長く第一線で活躍なさっているなあと感動するのですが、それもそのはず、ワタシが初めて作家・財津和夫を意識したのは、もう35年ほど前、あべ静江がきっかけだったりするのですから。
シーちゃんとチューリップは同じシンコーミュージック所属でしたし、ジョイントしたり、とっても仲が良い感じでした。財津さんとのロマンスが囁かれたこともありますが、曲の提供はシーちゃんがチューリップの曲を気に入って「私は小鳥」をカバーしたことから始まったそうです。
それが「心の音」「いたずら書き」、そして書き下ろし多数の名盤アルバム「 TARGET 」へとつながっていったのですね。今回、入らないのが残念ですが…。
また、松本隆さんとのコンビでいえば、「学生通り」や「グッド・フィーリング」(今回収録)などを書いた木之内みどりも見逃せませんし、森山良子の大作「バス通り裏」も必聴です。
聖子のメイン作家の1人として大成功を収めた後はアイドル系の依頼がぐっと増えていて、松本さんとは中山美穂「クローズ・アップ」、坂上香織 「赤いポシェット」、島田奈美 「ハロー・レディ」などのスマッシュヒットも飛ばしました。その中ではミッチョンこと芳本美代子が出色。その最高峰が「雨のハイスクール」と言えるでしょう。
ほかにも、康珍化さんと岩崎ヒロリンの「20(はたち)の恋」(今回収録)、最初の聖子コンビ・三浦徳子さんとは渡辺典子の「花の色」、意外なところでは聖子の後輩・岡田有希子にも書いていたり、阿木燿子さんとのコンビでは中森明菜にも提供したりしています。
最近では、応援している中孝介くんの「わたしの空」にぐっときたワタシですが、財津作品全体で一番好きなのは小学校の頃、NHKの「歌はともだち」や「みんなのうた」で覚えた「切手のないおくりもの」なのです(今回はビクターなので田中星児のバージョンを収録とのこと)。
おそらく財津さんの作品で最も有名でしょうし、幅広い世代に歌い継がれている名曲ですが、うたとひとの関係がここまでシンプルでありながら端的に描かれたものを、ワタシはほかに知りません。これからもきっと、ずっとこのうたに共感しながら生きていくことでしょう。
そんな素晴らしいうたを創られた財津さんに、あらためて感謝をこめて、このソングブックを聴こうと思っています。
(2009.11.19)