SHM-CD紙ジャケ仕様のブリッジ再発続編！

　今年2月、ブリッジから発売40thアニバーサリー企画として「ときどき私は…」と「SERI FIRST LIVE」のSHM-CD＆紙ジャケ再発（ こちらで紹介）が実現した石川セリさん。
 
　好評を博したのでしょう、続編として「 気まぐれ(+3)(紙ジャケット仕様) 」「 NEVER LETTING GO(+2)(紙ジャケット仕様) 」「 SERICEOUS NIGHT (+4)(紙ジャケット仕様) 」という３タイトルのリリースがアナウンスされました！
 
　前回は「SERI FIRST LIVE」の初CD化というビッグニュースがあったのですが、今回はいずれもCD化済み。
　一応おさらいしておきますと、「気まぐれ」は、まず87年にフォノグラムの“CD 2LP collectors ”という無理矢理な2in1シリーズで「ときどき私は…」とセットとなり何曲か間引かれて初CD化された後、94年にはCD選書化。廃盤になった後、2012年にタワレコ限定で再発されています。
　続く「Never Letting Go」も同じく94年に選書化、2012年にタワレコ限定で再発されています。
　「SERICEOUS NIGHT」はCD化こそ84年に済んでいたものの、選書化もタワレコ限定でも再発されることがなかったのですが、昨年の一挙出た MEG-CD にラインアップされております。
 
　ということで、いずれも廃盤が長いこと続いていたタイトルではありますが、近年の再発で入手したという方にとっては、タイミング的につらいものがありますが、なったって2017年の最新リマスタリングによるSHM-CDで紙ジャケ仕様、それぞれ貴重なボートラも付くというサービスぶりですからね。ファンとしては買い換え、買い増しもやむなしといったところでしょうか。
 
　77年６月の発売につき、今回リリース40周年記念盤となるサードアルバム「 気まぐれ 」は、先行シングル「ダンスはうまく踊れない／気まぐれ」を含む10曲。
 
　作家陣も豪華で、前作ではバックミュージシャンだった矢野顕子、長谷川きよしといったレーベルメイトや、井上陽水、来生たかお、芝紀美子らポリドール・キティ系に加え、南佳孝、パンタ（中村治雄）など錚々たる面々が参加していますが、注目はやっぱり「ダンスはうまく踊れない」をはじめ後に夫君となる井上陽水の提供作品でしょう。もっとも「ダンスはうまく踊れない」を全国区にしたのは82年の高樹澪のカバーなので、このアルバムの代表曲というとサーファーブームの79年にシングルカットされる「Moonlight Surfer／Midnight Love Call」でしょうか。
 
　隠れた名曲としては、矢野顕子ファンにはおなじみの「昨日はもう」。作詞はセリさんですが、独特の価値観と冴え渡った感性がアッコちゃんの才能と融合したナンバーで、それぞれの浮遊感が存分に生かされたコラボが見事。アッコちゃんもすぐ後に単独でセルフカバーしております。
　今回は、ボーナストラックとして、翌年リリースのシングルにしてNHK銀河テレビ小説の主題歌だった坂田晃一作品「ガラスの女／うしろ姿」（MEG-CD化済み）と、2008年の「Re:SEXY」に収録されていた「ダンスはうまく踊れない」の３曲が追加収録されるとのことです。
 
　それから１年後の78年6月、結婚直前のリリースとなった洋楽カバーアルバム「 NEVER LETTING GO 」。
　ステーブン・ビショップのタイトル曲をはじめ、ボス・スキャッグス「二人だけ（ウィー・アー・オール・アローン）」、マイケル・フランクス「アントニオの歌」、J・D・サウザー「ミッドナイト・プラウル」などなど、当時は最新、今ではスタンダードのAORがずらり。
　ビリー・ジョエル「素顔のままで」やイーグルス「デスペラード」など、AORの枠を超えたポップスのスタンダードなども含め、日本人好みのナンバーが目立ちますが、エヴィー・サンズ「ワン・シング・オン・マイ・マインド」、ヴェロニク・サンソン「ハウ・メニー・ライズ」、リビー・タイタス「愛は惜しみなく」といったセリさんに重なる女性ボーカルも含め、選曲センスに脱帽してしまいます。
 
　確かなバッキングと瀬尾一三アレンジの力を抜いたサウンドも相まって、ナチュラルで軽いのに心に響くセリさんのボーカルは、何年聞いても飽きない、エバーグリーンな魅力にあふれています。
　ボーナストラックにはスティーヴィー・ワンダーの「ユー・アー・マイ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」とボブ・ディラン「天国への扉」のライブ音源を追加収録。これは「SERI FIRST LIVE」の音源ではなく、ご本人が所有していた77年の「東京電機大学学園祭コンサート」の貴重音源を本人たっての希望で収録することになったのだそうですから、コレクター的なファンには今回一番の目玉になるのではないでしょうか。
 
　結婚休業を経て、81年に復帰。その後に出されたタイトルもジャケットも素敵な「 SERICEOUS NIGHT 」は、83年7月に新宿厚生年金ホールで行われた「SERI CONCERT TOUR」の模様を収めたライブ盤です。
 
　かの大村憲司さんがプロデュースと音楽監督を務め、豪華なミュージシャンがバッキング。復帰後の「星くずの街で」「MÖBIUS」「BOY」という３枚のアルバムを中心に、新旧織り交ぜて構成されていますが、注目は、作者のパンタとともに陽水やアッコちゃんがコーラスで参加した終盤の「Moonlight Surfer」もさることながら、林美雄「パックインミュージック」の頃からの因縁のライバル・ユーミンから提供を受けた２曲でしょう。
　荒井時代の第１次ユーミンブームの頃に書き下ろされた「朝焼けが消える前に」と、松任谷になってからの第２次ユーミンブームの際の同時期カバー「手のひらの東京タワー」ですが、セリさんとユーミンのマッチングの良さを実感。
　松任谷になってしばらくはくすぶっていた感のあるユーミンですが、当時はニューミュージックの女王として押しも押されない存在となった頃。セリさんの復帰の裏には、ユーミンの存在があったように思えるのは気のせいでしょうか。
 
　なお、ボートラとしては前述の「東京電機大学学園祭コンサート」の音源から、「Midnight Love Call」「虹のひと部屋」「あしたの風」「Flight」の4曲を追加収録。休養前後のボーカルの比較もできるというお楽しみつきです。
 
　というブリッジの再発。タイミングはともかく、ご本人も協力的で復刻の理想形のような雰囲気も漂っていますので、また再評価が進み、このシリーズの続編が続々と出ることを願っています。
　なお、待ちきれない方はタワレコ限定の「 星くずの街で ＜タワーレコード限定＞」「 MOBIUS＜タワーレコード限定＞ 」「 ボーイ ＜タワーレコード限定＞」「 ファム・ファタル ＜タワーレコード限定＞」「 楽園 ＜タワーレコード限定＞」がまだ入手可能ですので、そちらをどうぞ。