フォーク・NM界の重鎮による精選作品集！

　近年、作詞家、作曲家のみならず、アレンジャーやプロデューサーの作品集のリリースが続いておりますが、今回登場するのはフォーク界の重鎮として知られ、中島みゆきサンのブレーンとしても活躍する瀬尾一三さんの「時代を創った名曲たち ~瀬尾一三作品集 SUPER digest~ 」。
 
　1960年代後半から関西フォーク界で活躍し、裏方さんとして赤い鳥のマネージャー的な役割も果たしていたという瀬尾さん。赤い鳥のプロデビューに伴って上京。赤い鳥のマネジメントは決まっていたので最初はアルファミュージックのスタッフとして活動し、シンガー・ソングライターとしてもデビュー。さまざまなフォークのアーティストに関わりながら音楽キャリアを積んでいったというイメージがあります。
 
　今回の作品集は、瀬尾さんが手がけた膨大なナンバーの中から26曲を厳選。2枚組で26曲と、今時のコンピ盤のボリュームからいってもちょっと物足りない気もしますが、そこはやっぱり天下のヤマハという感じですね。
 
　2枚のCDは年代順に収録されていて、DISC 1に入るのは73年から80年までのナンバー。
　よしだたくろう（吉田拓郎）と共同プロデュースしたライブ盤「LIVE’73」の「落陽」から、チャゲ＆飛鳥の「万里の河 」までとなっていますが、かまやつひろし「我が良き友よ」、バンバン「『いちご白書』をもう一度」、長渕剛「順子」といったオリコンNo.1ヒットをはじめ、かぐや姫の「22才の別れ」、山本コウタローとウイークエンド「岬めぐり」、ふきのとう「白い冬」、杏里「オリビアを聴きながら」、など70年代フォークを代表するヒット曲やスタンダードがずらりと並んでいます。
 
　谷山浩子「星のマリオネット」、八神純子サードアルバムのタイトル曲「Mr.メトロポリス」などのヤマハ系、作曲も瀬尾さんでカップヌードルのCMソングとして好評を博したロブバード「ボーンフリー・スピリット」などのチョイスもマルです。
 
　一方、DISC 2は、82年から2016年までと年代の幅がかなり広い選曲。
　その分、NSP「めぐり逢いはすべてを越えて」、雅夢「夕映えよ心の鳩を抱け」、石川優子「ドリーミー・ドリーマー」といったヤマハのニューミュージック系だけでなく、レコード大賞編曲賞受賞曲となった德永英明「壊れかけのRadio」、久松史奈「天使の休息」といった90年代のトップ10ヒット、さらには角川三人娘・渡辺典子によるアニメ主題「火の鳥」、ヤマハのボーカルオーディションでグランプリを獲得してデビューを飾った森川美穂「教室」というアイドル勢もしっかり押さえられています。
 
　とはいえ、88年以降の瀬尾さんに欠かすことのできない存在と言えば、もちろん中島みゆきサン。アルバムのみならず、コンサートや舞台まで、音楽上のパートナーとしてガッチリ結ばれておりますが、ここでは92年の発表以来、愛され続け、いまだにカバーやカラオケ、CMなどで使用され2017年JASRAC賞金賞も受賞した代表作「糸」と、94年にオリコン1位をマークしたドラマ主題歌「空と君のあいだに」の2曲をチョイス。
　それに加えて、工藤静香の「激情」、中島美嘉の「愛詞（あいことば）」、ももいろクローバーZの「泣いてもいいんだよ」、さらには同日発売とナルみゆきサンのニューアルバム「相聞 」でセルフカバーされる平原綾香の「アリア-Air-」と、提供曲もたっぷり収録されます。
 
　やっぱり物足りなさが残りますので、赤い鳥「旅」やシモンズ「ひとつぶの涙」から始まって、大貫妙子「横顔」、風「ささやかなこの人生 」、あべ静江「生まれたままの姿で」、ハイ・ファイ・セット「雨のステイション」「DESTINY」、岡田奈々「青春の坂道」、庄野真代「マスカレード」、竹内まりや「ドリーム・オブ・ユー～レモンライムの青い風～」、西城秀樹「聖・少女」、松田聖子「LOVE SONG」「ピーチ・シャーベット」、中森明菜「サザン・ウインド」、河合奈保子「ハーフムーン・セレナーデ」、松尾久美子「メモワール」、山本潤子「いつでも夢に花束を」などなどを入れた私家版を作りたくなってしまいますが、実績からいってもBOXが編まれてもおかしくない方だと思いますので、今後のアンソロジーにも期待したいと思います。