ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#849
郷ひろみ/The 70's Albums
2017.10.18発売、SRCL-9507、¥22,000+税) *CD13枚組、完全生産限定盤 <2017.12.15 アンコールプレス>

70年代のオリアル13タイトル紙ジャケ復刻BOX!

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 1972年8月1日、岩谷時子+筒美京平コンビによる「男の子 女の子」でレコードデビューしてから、来月でちょうど45周年を迎える郷ひろみさん。
 
 フォーリーブスの弟分だったことも今となっては嘘のようですが、還暦を経てもなお若々しく、新御三家随一の精力的な活動を続けているものですから、あの頃と同じようについついゴーゴーレッツゴー、レッツゴーひろみ!などとかけ声を送ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。 
 
 毎年のツアーをはじめファンサービスにも定評のあるひろみのこと、節目の周年には何らかの企画商品をリリースしてくれていて、これまでにも25周年の1997年にはシングルAB面全曲入り8枚組CD-BOX「ALL THE SINGLES 1972-1997」(なんとテレカ付きでした!)、30周年の2002年には映像ソフト&主演映画をDVD化した圧巻のDVD-BOX「HIROMI GO DVD COLLECTION」2タイトル、そして35周年の2005年にはアナログ時代のドーナツ盤復刻CD-BOX「Single Collection of Early Days」5タイトルと、過去の復刻企画が続いておりました。
 
 2012年の40周年こそ、歌い直しや音源のリニューアルなどを行ったCD+DVDセット「40th anniversary limited box set“LINK”」( こちらで紹介)にとどまりましたが、なんとなく今回はアルバム復刻のような予感がしていたのですね。
 
 というのも今夏の新曲「 スキだから 」のプロモーションを兼ねたメディア露出では、例年になく懐かしい初期のナンバーに触れるケースが目立っていましたから。
 中でも、BS日テレでオンエアされた 「歌謡プレミアム特別版 郷ひろみ2時間スペシャル」では、初期のナンバーを歌ったり、「紅白歌のベストテン」などの懐かしい映像もふんだんに流れ、よく出てくる「林檎殺人事件」だけでなく「誘われてフラメンコ」や「バイブレーション(胸から胸へ)」の当時の歌唱映像も見られた上、ご本人も珍しく饒舌にコメント。
 ひろみの場合、現役のアーティストである上、10代の時から常に先を見ていて、いつも過去の活動には興味がないと言っていましたし、ひと頃は昔のナンバーをほとんど歌わなかったり、昔の映像が流れることすら難色を示した時期もあったほどでしたから、これは何かありそう!と思ったのも無理からぬことだったのです。
 
 そしてついに、70年代のオリジナルアルバムBOX「 The 70's Albums [13CD+特製ブックレット+シール]<完全生産限定盤>」を発売というニュースがアナウンスされたのです! しかも62才のバースデイにリリースされるのだとか!
 待ちに待ったひろみのオリアル復刻。91年にCD選書として10タイトルが一挙リリースされて以来、何せ26年ぶりの復刻ですからね。興奮もひとしおなのです。
 
 といっても今回は選書の続編ではなく、最初からの仕切り直し。CD化済みだった「男の子 女の子」「愛への出発」「ひろみの部屋」「ひろみの朝・昼・晩」「ひろみの旅」「HIROMIC WORLD」「街かどの神話」「アイドルNo.1」「ピラミッド ひろみっど」「Narci-rhythm」という10タイトルに加え、今回初CD化となる「アポロンの恋人」「LOOKIN’ FOR TOMORROW」「SUPER DRIVE」を加えた13タイトルのBOXセットとなるそうです。
 
 しかし、今回は帯やインナーも含め、できるだけ忠実にCDサイズにリサイズした紙ジャケット仕様(封入ポスターは除外)。そして歌詞やスペシャルインタビュー、郷ひろみ年表を掲載した特製ブックレットとともに撮りおろし写真をあしらった特製BOXに入れ、さらに本人絵柄シールも封入されるという、まさに愛蔵版BOXとなる模様です。
 もちろん最新リマスター音源での復刻となりますので、選書を持っている人も買い換え、買い増しがオススメです。
 しかも、8月20日までに予約すると、先着予約特典としてクリアファイルがもらえるそうですので、どうせ買うなら早めのご予約をお忘れなく!
 
 さて、ヤングのエース・郷ひろみの70年代といえば、シンシアに続くCBS・ソニー&日音の金字塔。筒美京平作品もとっても多いので、簡単に内容を紹介しておきましょう。
 
 まずは72年11月発売、ソニー坊やのファーストアルバム「男の子 女の子」。
 デビューシングル「男の子 女の子/夢をおいかけて」を含む筒美作品5曲のほか、60年代ポップスのカバー、FLのコーちゃんこと北公次作詞作品などを収録。あの声質と青さが極まって、初々しい魅力が全開です。
 
 続く73年5月発売の「愛への出発」は、なんと全曲オリジナル。ジャクソン5の邦題と同じですが曲調はロック歌謡の「小さな体験」や、人気が決定的になった「愛への出発/不思議な子」という2大ヒットシングルを筆頭に、筒美作品は6曲入り。
 さらには、ひろみの声質を最大限生かしたひょっこりひょうたんな寺山修司+宇野誠一郎コンビによる「君にお月さまをあげたい」など、FLからの流れをくむジャニーズ歌謡の真骨頂という雰囲気も漂う佳作です。
 
 そして、たまらない魅力がいっぱい、74年1月の「ひろみの部屋」は、ひろみが電話越しにアルバムを聴かせるという画期的なコンセプトアルバム。筒美作品は「裸のビーナス/僕たち」と明星募集歌「魅力のマーチ」のヒットシングルを入れて9曲。選書ではナレーションがカットされていましたが、今回はどうなることでしょう。
 珠玉は主演ドラマ「ぼくは叔父さん」主題歌として知られるセンチメンタルチューン「夢で会おうね」でしょう。筒美先生がひろみに仕立てた最高のオーダーメイドは、実はソウルやR&Bではなく日本人の哀愁だったことが分かる傑作です。
 翌年の最大ヒットにして唯一のオリコンナンバー1ヒット「よろしく哀愁」の予告編ともいえそうですけど、ひろみの特性が最も生きて大衆に支持されるラインをしっかり見抜いていらしたのでしょうね。
 
 まだまだ快進撃は続きまして、みんなが知りたいひろみの生活をオリジナル曲でつづった「ひろみの朝・昼・晩」は74年6月発表。全曲が岩谷時子+筒美京平コンビで、一つの頂点といえるアルバムです。
 個性が際立つひろみ独特の声質と、フィリーソウルやR&Bを中心にカッコイイけれど流行を取り入れすぎる筒美サウンドは、聴く側の女子ファンのひろみに対する欲望と相まって、ともすると下世話で下品になりがちになったりするきらいもあるのですが、奇跡的に品の良さを保っているのはやはり岩谷女史の力量。当然計算していたのでしょうけど、そのへん酒井政利プロデューサーのすごさをあらためて実感します。
 今作では、岩谷先生のお家芸といいますか、ぼかぁ…みたいな若大将チックな台詞もあったりして、そのあたりも含め頂点を感じるのですね。シングルを除き、ドリーミー&ソウルフルな高田弘アレンジも素晴らしい出来ですしね。
 なお「花とみつばち/悲しみをわけて」をフィーチャーしていますが、ひろみの昼のステージの一コマとして、金切り声のようなファンの声援がかぶせてありますので、別物感覚で楽しめますね。
 
 そして75年6月発売の「ひろみの旅」は、ジャニーズ事務所を脱退し、新しい地図をひろげて旅立つひろみの記念碑的アルバム。
 「よろしく哀愁/セーターに愛をこめて」「わるい誘惑/ふりむいた君」「花のように鳥のように/五月の恋人たち」という既発シングルと、新旧の筒美作品カバーで構成という一見安易な感じもするアルバムなのですが、侮るなかれ。
 なんと「青いリンゴ」と「恋する季節」という新御三家のナンバーを同時にカバーしているのですぞ。意図的だった花のトリオですら、百恵ちゃんに同じ事務所の森昌子はカバーさせても淳子はNGだったのに…とか思いは逡巡し、ひろみ陣営の懐の深さが感じられるアルバムでもあります。
 
 そんなこんなで一層ハイレベルな境地に入ったのが、75年11月発売の「HIROMIC WORLD」。全曲を荒井由実+筒美京平コンビが手がけ、シングル曲を一切含まないという画期的なコンセプトアルバム。CBS・ソニーで酒井さんの部下だった白川隆三さんも尽力したという名盤です。
 ユーミンはひろみのファン層にも大人気で、セブンティーンで恋愛指南などもやっていましたけれど、そんなユーミンの感覚的な詩に見事に応える、筒美先生の飽くなき才能よ。ユニークなひろみボイスも少年期最後という感じで、非現実的な夢のシチュエーションを逆にリアルに演出しております。
 そういえばこのCD選書は、筒美フリークのみならずユーミンファンのおかげでもあって、廃盤になるのが最も遅かったように思います。
 
 それから1年、顔もヘアもスッキリして、ぐんと大人っぽく、男っぽく成長したひろみ。
 76年12月発売の「街かどの神話」は、タイトル曲や名作シングル「寒い夜明け/南の果実」を含め、鬼才・楳図かずお+筒美京平というコンビをフィーチャー。
 前年のレコ大の雪辱を果たした橋本淳+筒美コンビのヒットシングル「あなたがいたから僕がいた/夏のページ」がかすんでしまうほど、グワシな楳図先生の才能とそれに動じない筒美先生の対応に脱帽してしまいます。
 ちなみに筒美作品は8曲で、ひろみ自身が荘久史というペンネームで作詞作曲した2曲も入っております。
 
 さて、月刊「明星」の人気投票では73年から7年連続白組ナンバー1、まさにトップアイドルとして不動の地位を確立したひろみですが、人気絶頂の77年9月発売のアルバムは、その名もズバリ「アイドルNo.1」。
 きらめくような青春の軌跡が描かれておりますが、ひろみの底知れぬ才能を見抜いていた小谷夏(久世光彦)作詩の「悲しきメモリー」と、岡田冨美子作詩の「洪水の前」という筒美シングル以外は、すべてピンク・レディーで絶頂を迎えた都倉俊一先生に託しています。
 イメージ的にはラグタイムを最も得意としていた印象のある都倉先生ではありますが、アメリカンモードな筒美作品に比べ、湿度が高いヨーロッパっぽい雰囲気のナンバーも魅力。ファン人気の高さでいえば、コンサートの定番曲だったアップテンポのヨーロピアンディスコにしてPLに通じる「MIND反比例」になるのでしょうけど、岩谷女史とのコンビによるペドロ&カプリシャス風のミディアムバラード「それが愛」「雨の浪漫」「悲恋」などもオススメです。
 
 さて、いろんな意味で超人的というか、いい意味の個性的な変人という素顔のせいで、ドラマや映画の劇中ではなんか違和感の多かったひろみですが、その個性が本当に生きて演技が花開いたのは、久世さんの演出からではなかったかと思います。
 その久世さんが放ったヒットドラマ、実質的にはひろみ主演といえるTBS水曜劇場「ムー」のイメージを映したアルバムが、劇中歌「帰郷/お化けのロック」の入った「ピラミッド ひろみっど」。
 77年12月発表ですが、同月に発売されたばかりの最新シングル「禁猟区/ブラック・ジャック・サンデー」も収録。山口百恵のメインライターになった阿木燿子+宇崎竜童、南沙織のアメリカンポップス回帰で登用となったつのだひろ、キャンディーズのフィナーレに向けて起用した島武実+宇崎竜童と、当時の酒井さんがCBS・ソニーのアイドルで絡ませた、ユニークな4人の作家で築かれた新しいひろみ像が堪能できます。
 
 次は78年7月、空前のディスコブームの中に放たれた「Narci-rhythm」。阿久悠、阿木燿子、島武実の各氏が詩を書き、全曲を「林檎殺人事件」の穂口雄右先生が作曲。
 「ムー一族」の劇中ディスコナンバー「HELL OR HEAVEN」をはじめ、全編ナウなディスコティックという印象ですが、古風な詩とメロウなサウンドが久世タッチな「奇しくもはかなくもおかしくも悲しい物語」が出色でしょう。
 
 そしてここからが今回初CD化の3作。まず79年4月発売の「アポロンの恋人」は、全曲筒美京平作曲、筒美フリークからCD化が切望されていたアルバム。阿木燿子、小谷夏、島武実の三人が文学性の高い詩を提供していますが、先行シングル「地上の恋人/TATTOO」と、アルバム未収録のシングル「ナイヨ・ナイヨ・ナイト」B面に収録されていた「追憶の嵐」に代表されるように、この年、ジュディ・オングの「魅せられて」で席巻する阿木さんとのコンビが傑出。
 ジュディのエーゲ海で展開した一連の世界観はもとより、酒井さんが後に百恵ちゃん引退時に使用する神話というキーワードも全てがつながっていますね。
 
 そしてゴダイゴが人気絶頂の79年8月発売、太陽に躍動するラブ・メッセージを感じる「LOOKIN’ FOR TOMORROW」。阿久悠+ミッキー吉野のゴキゲンなシングル「いつも心に太陽を/ジゴロ」を含むオリジナルと、エンターティナー・ひろみの洋楽カバーで構成した企画盤です。
 洋楽ヒットとしてはロニー・ミルサップの「It Was Almost Like A Song(憧れは果てしなく)」、ニール・ダイヤモンドの「Forever In Blue Jeans(ブルー・ジーンズ・ライフ)」、ゲイリー・ライト「Keep Love In Your Soul(闇に消えた少女)」などがチョイスされていますが、ひろみが心酔していたビリー・ジョエルの「My Life」「Honesty(心の絆)」で決まりでしょう。
 
 最後は久々の大ヒットとなった「マイ レディー」で大躍進後、79年12月に発売となったシティポップの名盤「SUPER DRIVE」。
 NYを自らの精進ステージととらえ、19才の時から本格的にレッスンに通っていたひろみ。泣く子も黙る24丁目バンド(The 24th Street Band)がバッキングを担当、ニューヨーカー・ひろみの向上心が花開いたアルバムです。
 80年代という女性の時代の到来を前に、作詞は竜真知子と岡田冨美子という女性陣で固め、作曲には林哲司、網倉一也といった新進気鋭のソングライターと、ビリー・バンバンの弟でCBS・ソニーに移籍した菅原進、秀樹のバックを経てCBS・ソニーからSHOGUNとしてブレイクした芳野藤丸といった男性陣を起用。ひろみ版・80年代に向かってという感じの意欲作に仕上がっていますが、オススメはやっぱり、バーニングの後輩・風見慎吾もカバーしたオープニングナンバー「朝陽のプロローグ」でしょうか。
 酒井さん人脈で、かの横尾忠則御大が担当したアートワークも素晴らしいですよね。
 
 と長々と書いてしまいましたが、これらがひろみの70年代アルバム。
 選書を持っているファンとしては、いまだ未CD化の「MAGIC」「How manyいい顔」「PLASTIC GENERATION」「アスファルト・ヒーロー」や数々のライブ盤、さらには初主演映画のサントラかと思いきやサントラではなく、詩・構成を小谷夏、音楽を梅垣達志が手がけた幻のイメージアルバム「さらば夏の光よ」を早く復刻してほしいというのが正直なところでしょう。
 特に和製マイケル・ジャクソンを目指してレッスンを積んだ成果が出たライブアルバムは、エンターティナーとしての貴重な成長の記録でしょうしね。
 
 ただ、ひろみの場合、同じソニーでも現役アーティストのレーベルに所属している以上、おいそれと復刻企画が立ち上がるとは思えませんから、以後の復刻を望む方はまず今回のBOXをガッチリ買いましょう! そして、その上でバッチリリクエストいたしましょう!
 
 
 

(2017.7.18)
 
 
*即完売でリクエスト多数につき、アンコール・プレスが決定! 2017年12月15日以降出荷開始とのことです。Sony Music Shop iconTOWER RECORDS ONLINEなどで販売受付を確認の上お求めください。(2017.11.30)
Sony Music Shop

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