ナツメロ喫茶店

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#870
岸田智史/武道館ライブ―軌跡―
(2018.3.15発売、DQCL-721、¥ 4,320+税)*2枚組・Blu-spec CD2/オーダーメイドファクトリーで条件をクリア、復刻決定!

絶頂期の武道館ライブも初CD化へ!

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 今となっては世間では橋田壽賀子ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」の健治さんを演じた俳優・岸田敏志としての印象が強いようですが、我々世代にとってはやっぱりシンガー・ソングライターであり俳優業もこなしていた岸田智史さん。
 
 以前はオーダーメイドファクトリーでもCD復刻達成ならずという憂き目に遭っていたのですが、このところOMFでの復刻実現が活発になっているのはご存じの通り。今月にはCBS・ソニー時代におけるすべてのスタジオ録音オリジナルアルバムのCD化がめでたく完結しましたが、このタイミングで残る1タイトル、そう、唯一の未CD化ライブアルバム「 岸田智史武道館ライブ―軌跡― icon」も候補に挙がりました!
 
 フォーク全盛の76年にデビューし、百恵ちゃんにも楽曲提供を行うなど評価の高かった岸田さんですが、本格的にブレイクを果たしたのは79年。それも歌手役で出演し現実とリンクしたかのようなドラマ「愛と喝采と」がきっかけで、劇中で歌った「きみの朝」の大ヒットによるものでしたから、俳優がメインだと思っていた人も多かったようです。
 
 歌声や音楽性、そしてルックスも、繊細かつ温厚でありながらどこかダイナミックさも持ち合わせたその世界観は、ニューミュージックがお茶の間へと浸透していった時代背景も味方につけて、シングルもアルバムもオリコン1位という大ヒットを記録。続くアルバム「ON THE WAY」も首位を獲得と、一躍トップアーティストの仲間入りを果たしたのでした。
 
 翌80年春からは、元々当初は主演が予定されていたという「3年B組金八先生」の後番組「1年B組新八先生」で、満を持して主役の新田八郎太を熱演。主題歌「重いつばさ」はオリコントップ10入りを記録。ドラマは大好評で終了しましたが、このライブ盤はそんな人気絶頂期の80年8月、日本武道館で行われたコンサートの模様を収めたもの。
 “さわやかな汗を飛ばし疾走する岸田 強力なパワーとあたたかな人間性 彼の底力をまざまざと感じさせるファースト・ライブ”という帯コピーの通り、デビューから5年間の魅力を凝縮したベストライブ的な内容で、バッキングは自らの岸田バンドと、前田憲男さん指揮による東京交響楽団が務めています。
 
 構成は1枚目が「21のキャンドルライト」「つづれおり」「きみの朝」「蒼い旅 」といったシングル曲に、アルバム曲のメドレーをプラス。清水由貴子がアルバム「私小説」( こちらで紹介)でカバーした「三日月夜話(母へ…) 」も収録。
 2枚目は当時の最新アルバム「螺旋階段」と同じく「ニューヨーク」からスタート。リカットシングル「螺旋階段」や、ファン人気の高い「黄昏」や新八先生の「重いつばさ」、そしてラストは感動的な「少年のセレナーデ」で締めくくられていますが、MCも含め岸田さんのハートウォーミングな魅力が存分に伝わってきます。
 
 個人的にも、当時新八先生の生徒たちと同じ中1だったものでドラマにドハマリし、新八先生と遥くららさんの久美子先生はウチの先生だったらいいのに…という憧れを抱いたものですが、このライブ盤には確かに新八先生の一面も収録されているような気がしますので、あのドラマが好きだったという人にはぜひ聴いていただきたいと思います。
 余談ですが「1年B組新八先生」はいいドラマだったにもかかわらず語られることが少ないのは、中1につきセンセーショナルな設定がなかったのと、金八先生に比べ強烈なアクがなく地味に思われたこともあるでしょうけど、何よりたのきんブームに押されたのと、未来のスターを予感させる生徒が見当たらなかったのが原因のように思います。
 生徒で目立ったのは小学校で上映会が開かれた「ガキ大将行進曲」に出演していた斉藤康彦と難波克弘のコンビぐらいで、後に「欽どこ!」の見栄晴として脚光を浴びる藤本正則クンも全く目立つ存在ではなかったように思いますから。
 ちなみに悪ガキの斉藤クンが唯一ビクターからアイドル歌手としてデビューしたくらいで、優等生の難波クンは「大草原の小さな家」など声優として結構知られた存在だったもののアイドルになれるタイプではありませんしたしね。
 けれど、岸田さんの魅力が役の個性と重なった演技が牽引した名作ドラマだと思いますので、コレを機に再評価が高まりDVD化されることを望んでおります。
 
 余談が過ぎましたが、岸田さんのCBS・ソニー時代のアルバムはデビューからの4枚「パーマネント・ブルー」「シ・ト・ロ・ン 」「僕が通り過ぎた日々」「モーニング 」が91年にCD選書シリーズでCD化済み。ただし、すべてが廃盤で、現在CDとして入手できるのは2013年の名盤復刻シリーズ( こちらで紹介)で再発された「 モーニング 」のみですが、以降のアルバムも含め、ソニー時代の音源はすべて 音楽配信 されていますので音源の入手は可能です。
 
 その後の4枚「 ON THE WAY icon」「 螺旋階段 icon 」「 Rain +2 icon 」「 Espace・愛の空間 +5 icon」は、2016年から2017年にかけてオーダーメイドファクトリーで初CD化されており、現在もCDとして入手できます。
 ちなみに「ON THE WAY」「螺旋階段」の2タイトルは、復刻ブームの2006年にOMFの候補に上るも当時は達成ならず。昨年復刻されたものは同じ型番で10年超えのリベンジを果たしたものですので、再評価の機運が高まっていると見るべきでしょうか。
 
 なお、ベスト盤は移籍後のナンバーもチョイスされた2枚組自選ベスト「 GOLDEN☆BEST/岸田智史 」のほか、シングル曲がコンパクトに並べられた「 エッセンシャル・ベスト 岸田智史 」も生きていますので、あらためてシンガー・ソングライター、岸田智史の魅力に触れてみるのもオススメです。
 
 また、岸田敏志としても現在も地道に歌手活動を続けておられ、ライブも開催されている模様。2015年には「きみの朝」のセルフカバーを含む「 ボルドー・ルージュ 」、2016年には初期のセルフカバー「 黄昏(ニューバージョン) 」というように、新作もコンスタントにリリースされているとのことです。
 
 
 

(2017.12.21)
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