ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#892
大貫妙子/MIGNONNE <アナログ盤>
2018.5.23発売、MHJL-21、¥3,700+税) *完全生産限定盤

ター坊RCA時代の第1弾、アナログLPで復刻!

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 世は空前のアナログ盤ブーム。高騰する中古盤のみならず、現役で活躍中のさまざまなアーティストが新譜のアナログレコードをリリース。さらには古今東西の名盤旧譜の再発や、初出がCDだったアルバムのアナログ化も盛んになっていて、昨年のアナログレコードの国内生産数は106万枚となり、2001年以来16年ぶりの100万枚を回復したのだとか。
 
 レコードがどんどん衰退しCDに取って代わられた時のことや、レコードに対する数々のネガティブな批判をまざまざと覚えている世代としては、やっぱり驚きと隔世の感に包まれるばかりです。
 
 そして、ついにソニーミュージックでは約29年ぶりにアナログレコードの自社一貫生産をスタートさせることになったというワケですが、それまでのアメリカ生産は不安定で、昨秋にまさかのアナログ再発となった太田裕美「心が風邪をひいた日」( こちらで紹介)をはじめ、多くのタイトルが発売延期になったり中止になったりしておりましたので、これにて安定供給が実現。発売されるタイトルもますます増えてゆくような気がしています。
 
 実は、今回めでたく発売日が決定したター坊のRCA移籍第1弾にしてサードアルバムの「 MIGNONNE<完全生産限定盤>【LPレコード】」もその影響を受けておりまして、当初は昨秋に4thの「ROMANTIQUE」とともに2作同時発売予定とアナウンスがされていたもの。
 それがアメリカのQuality Record Pressings社でのプレス生産の遅れでいったん中止となるも、国内の自主生産がスタートするタイミングに合わせて仕切り直しされ、ついにリリースされる運びになったという次第です。

 とりあえず「ミニヨン」1枚だけとなっておりますが、当初の予定よりプライスダウンされておりますし、いろんな意味で安心のメイド・イン・ジャパンですから、なんとも喜ばしい限りです。
 
 さて、ター坊のアナログ盤というと、昨夏のテレビ東京「YOUは何しに日本へ?」で、クラウン時代のセカンド「SUNSHOWER」目当てに来日したアメリカ人YOUが話題となり、そのアナログ再発盤「 SUNSHOWER icon」が完売したり、アンコールプレスを繰り返したり、はたまたその勢いでファースト「 Grey Skies icon」もアナログ再発されるなど、まさにアナログ的再評価では高いポジションに位置するアーティスト。
 同番組の2月のオンエアでは、そのアメリカ人YOUとご対面を果たすシーンが流れるなど再注目を集めていますが、今回のリリース確定はやや遅くなったものの、一連の好タイミングに乗れた感じで、ますます脚光を浴びる気がします。
 
 内容を簡単に紹介しますと、今回アナログリリースが確定した「 MIGNONNE【完全生産限定盤】アナログ盤 icon」は、78年9月25日発売で、シュガーベイブの同胞、山下達郎さんも在籍していたRVC・RCAレーベルへの移籍第1作。
 クラウンでの2枚がまったく売れなかったので、売れるアルバム作りが必須条件での移籍だったといいます。そのため、音楽評論家の小倉エージさんをプロデューサーに迎えて制作されたのですが、分かりやすい売れ線狙いでかなりダメ出しをされ、迎合して作ったということで、ご本人は気に入ってないことを公言しておられます。アッコちゃん(「 峠のわが家 」)やマッキー(「 Listen To The Music 」)にもカバーされた「海と少年」なんて、セットリストに入れるのも嫌がるほどなんですよね。
 
 しかしコレが名曲ぞろい、ター坊の志向とは違っても、客観的にも名盤と呼ばれる仕上がりなのですね。
 中でも最も知られているのが代表曲「突然の贈りもの」。レーベルメイトとなる竹内まりやがデビューアルバム「 BEGINNING 」でカバーしたのをはじめ、数多くのアーティストに歌い継がれている名曲です。
 ほかにもター坊が大好きなフィフス・アヴェニュー・バンドをイメージしたという小品にしてあの徳丸純子もカバーした「横顔」(「 徳丸純子 ゴールデン☆ベスト 」でCD化済み。矢野アッコちゃんは「 SUPER FOLK SONG 」でカバー、今春は再カバーバージョンが「アサヒ グランマイルド」のCMで流れていますね)など、どれも粒より。
 ボーカルもぐんとしっかり安定し、まさに“心から心へ新しい歌の贈りもの”という感じ。ジェームス・ディーンのあの写真を意識したようなジャケットもナチュラルで素敵です。
 
  ちなみにディレクターは、事務所サイドはシュガーベイブ時代からマネジメントしていたプロデューサーのマキジイこと牧村憲一さん。レコード会社サイドはシンシアファンにはおなじみ、リバティ・ベルスのメンバーだった宮田茂樹さんですが、坂本龍一&瀬尾一三の両氏がアレンジャーを務め、細野晴臣さん、高橋幸宏さん、鈴木茂さんら豪華メンバーがバッキングというのもポイントでしょう。
 なお、このアルバムからは「じゃじゃ馬娘/海と少年」が同時発売でリカットされています。
 
 とはいえ結局は売れず、ター坊はもはや迎合せず独自の道を進むことになるワケですが、ご本人以外からは名盤と賞讃されるアルバム(今回のリマスターでご本人もやっと聴けるようになったとおっしゃっていましたが…)ですし、今回のアナログ復刻によって、ますます再評価が高まりそう。 
 
 というソニー自社生産による、大貫妙子RVC・RCAレーベルのアナログ復刻第1弾。今回はインナーの付録として、ター坊自身による最新セルフライナーと、マルチテープに同梱されていたトラックシート(現存分のみ)が復刻掲載されるそうです。
 
 なお、残念ながら同時発売になりませんでしたが、当初の予定通りヨーロッパ三部作の第1弾「ROMANTIQUE」も復刻されるようですし、続く「AVENTURE」「Cliché」もリリースが決定しているそうですから、ホントに楽しみ。
 好評を博し、ディアハートレーベルの「SIGNIFIE」「カイエ」へと続いていくことを願っております。
 
 
 

(2018.4.25)
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