ユニバーサルの新廉価盤シリーズにあの名作が！

　クラシックや洋楽ではLP時代から定番化し、CD時代になってからも今日に至るまでずっとシリーズ展開されている再発ものの廉価盤。
　邦楽で一大ムーブメントになったのはCD全盛時代に突入した90年代、CBS・ソニーグループが1,500円で展開した「CD選書」シリーズが先鞭を付け、各社へと広がったQ盤プロジェクトではなかったかと記憶しておりますが、今でも旧譜のスペシャル・プライスとして活発に展開しているのがユニバーサルミュージック。
 
　「ゴールデン☆ベスト 999」シリーズや、「サントラ1000キャンペーン」、先日出た「エッセンシャル・ベスト1200」シリーズ（ こちらで紹介）などなど、期間限定ではあるものの豊富な再発タイトルを定期的に繰り返してリリースしてくれております。
 
　何せどれも1000円前後と、かつての「音蔵」「極上音楽」「CD叢書」といった自社系Q盤シリーズよりもさらに安い超廉価盤ですから、ユーザーにはホントありがたい企画ですよね。
 
　そして今回初登場となるのが「 入手困難盤復活!! 再評価されるニッポンの名作1000」シリーズ。
　今春に一挙発売された「入手困難盤復活!! ハード・ロック／ヘヴィ・メタル1000」の邦楽編という感じですが、“廃盤もしくは製造中止となった後も、根強い支持や再評価から中古市場でも入手困難となっていた邦楽の歴史的重要盤をピックアップ”といううたい文句の通り、60年代から90年にかけての67タイトルがラインアップ。
 
　こういう企画である以上、基本的に何度も再発されてきた人気タイトルやビッグネームの在庫切れタイトルが中心なので、レア度は高くありませんが、こういう廉価盤が市場に流通するのはウレシイ限り。
　なお、再発を繰り返しているタイトルは、今回ボートラの有無などにバラツキがアリ、いつの再発をベースにしているかによって内容も異なっているようなので要注意ですぞ。
 
　今回のラインアップでは、93年の音蔵、97年のQ盤・COOL PRICE、2003年の必聴名盤シリーズ紙ジャケ、2005年の名盤グラフィティー、2009年の紙ジャケ、2013年の2for1と、数え切れないほどCD再発を繰り返してきた尾崎亜美「 ストップモーション 」や、94年のCD選書、2009年の35周年記念再発に続く3度目の大橋純子「 CRYSTAL CITY 」「 FULL HOUSE 」などもいいのですが、2000年以来久々の再発となるピコ（樋口康雄）の「 ABC/ピコ・ファースト 」をオススメしましょう。
 
　NHK「ステージ101」で活躍したシング・アウトのメンバーとしても知られ、19才でソロデビューを飾ったピコ。天才の名をほしいままに作編曲を自在にこなし、劇伴やクラシックで成功を収めましたけど、歌謡曲畑ではNHK少年ドラマシリーズの主題歌で盟友・石川セリが歌った「遠い海の記憶」や、岩崎宏美が益田時代に出した三部作などでおなじみです。
 
　この記念すべきファーストアルバムは、オープニングの「あのとき」ほか4曲を石川セリが作詞。“弱冠19才のスーパー・アーティスト”という触れ込みの通り、72年のアルバムとは思えないポップ感覚を満喫できます。
　当時はほとんど売れなかったようですが、90年代後半からのソフトロックブームで再評価されたことは記憶に新しいところ。ピチカート・ファイブの小西康陽さんらがリミックスしたり、こぞって高評価していたので、そこから聴き始めたという人も多いでしょう。
　2000年の初CD化の際に初回プレス分にのみオマケCDシングルとして付いていた「I LOVE YOU」のシングルバージョンは付加されないようで残念ではありますが、このお得な機会にぜひどうぞ。
 
　今回はフォーク・ロック、ニューミュージック、ジャズ、パンク、メタルの定番タイトルが中心で、歌謡曲やアイドルポップスが入っていませんが、今後に期待したいところです。