第7弾は2タイトル、10インチアナログも！

　デビュー40周年を機に、衝撃の再始動を発表してからはや1年。今月13日には58才のバースデイを迎え、新ファンクラブ・ALDEA限定でグッズ販売のクローズドイベントを開催した中森明菜さん。
　といっても、ご本人は直筆メッセージや写真による参加だったそうで、表舞台までの道のりはやっぱり遠く、一歩ずつゆっくりと進んでいる印象がありますが、古巣であるワーナー時代の復刻企画「中森明菜デビュー40周年記念 ワーナーイヤーズ・全アルバム復刻シリーズ」（第1弾は こちら、第2弾は こちら、第3弾は こちら、第4弾は こちら、第5弾は こちら、第6弾は こちらで紹介）もいよいよ大詰めへ。
 
　8月5日にはスピンオフといいますか、シティポップに特化したアナログイベント「CITY POP on VINYL 2023」の関連リリースとして、アナログ・スペシャルと題した「CRIMSON」のアナログ盤2種「 CRIMSON＜完全生産限定盤/Color Vinyl＞」「 CRIMSON +1＜完全生産限定盤/Color Vinyl＞」が発売されるのに先駆け、第7弾の9月リリースも発表となりました。
 
　ワーナー時代のオリジナルアルバム、ベストアルバム、ミニアルバム全23作品を、約2年にわたって再発する企画ですが、終わりが見えてきたこともあってかペースダウンし、今回発売となるのは2作。ミニアルバム「 Wonder【オリジナル・カラオケ付】＜2023ラッカーマスターサウンド＞」とオリアル「 Femme Fatale【オリジナル・カラオケ付】＜2023ラッカーマスターサウンド＞」で、「Wonder」については初ヴァイナルとなる10インチアナログ「 Wonder＜完全生産限定盤/Yellow Vinyl＞」もリリースされるとのことです。
 
　まず、88年6月発表の「 Wonder【オリジナル・カラオケ付】＜2023ラッカーマスターサウンド＞ 」は、その2年前に発表したセルフプロデュースの異色作「不思議」のスピンオフといえるCD限定企画盤。
　アルバムとはミックスが異なる5曲に、吉田美奈子が手がけた未収録曲「不思議」をプラスした全6曲で構成されていますが、ボーカルのサウンド化を実現し大きな物議を醸した「不思議」とは異なり、歌を聴かせるという意味においては歌姫・中森明菜の真骨頂といえる仕上がり。これが当初のリリースされる予定のミックスだったのかと思えるような感じです。
　ウイスパー唱法の芯がハッキリ出て耳に残る分、サウンドもより妖しく聴こえ、幾重にも分かれた精神世界の階層をなぞってゆくようですが、「不思議」で感じた退廃的なオカルトへの傾倒は、もう明菜の日常になってしまったと実感したものです。
　当時はGOLD CDとしてもリリースされておりましたが、今回の別形態は10インチアナログ。ジャケットも含めグッズ的にも魅力的なアイテムになるんじゃないでしょうか。
 
　それから2カ月後に発売となったのが、LA録音によるオリジナルアルバム「 Femme Fatale【オリジナル・カラオケ付】＜2023ラッカーマスターサウンド＞」。シングル曲は一切含まず、アレンジャーはもとより、ソングライター陣も大半が外国人と、一見、世界をお金で買っていたバブリーな時代を映したかのようですが、そこは明菜のこと。
　ゴージャスでダンサブルといっても軽くノれるユーロビートではなく、どっしりヘビーなファンク。ボーカルもよりパワフルになって、淫靡に陶酔しまくるデコラティブなナンバーがそろい踏み。まるで現実世界を逃避したような独特のバイブスには、空恐ろしささえ感じるほどの孤高さが漂っております。
　タイトルのファム・ファタルは、フランス語で“運命の女”を意味しますが、当時は月刊カドカワで斉藤由貴さんが同名の散文詩を連載し始めた頃。自身が生まれ持った性（さが）と業を自覚し、その後の数々のスキャンダルさえ覚悟を決めていたような斉藤さんと比べると、明菜は奔放に見えてもやっぱり古風で一途だったのでしょう。
　このアルバム全編に絡みつく宴の後の儚げな余韻が、そのへんを物語っている気がします。もちろん個人的感想ですけどね。 
 
　という今回の2作。明菜のアルバムは廉価盤から紙ジャケ、SACDまで何度もCD再発されていますし、音源としてはもう十二分に行きわたっているのではと思ってしまいますが、このシリーズはラッカーマスターサウンドで全曲のオリカラ付き。買い増し、買い替えの方はお忘れなく！