ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#848
渡辺満里奈/MY FAVOURITE POP
2017.9.20発売、初回生産限定盤3CDMHCL-2708、¥3,900+税/通常盤2CDMHCL-2711¥3,000+税)

30周年で30曲!自選の記念ベスト!

 渡辺満里奈さんといえば、ある時から確固としたライフスタイルを持つマルチタレントのイメージがつき、キョンキョンみたく業界問わず数多くのアーティストからリスペクトされるような存在になりましたけれど、ボーカリストとしても安定した再評価が続いている模様。
 
 キャリアをひもとくと、おニャン子クラブ会員番号36番として「深呼吸して」でレコードデビューを飾ったのが1986年10月ですので、20周年の2006年には紙ジャケ15枚組CD+DVDボックス「MARINA WATANABE ALL IN ONE」を発売。
 25周年目に突入した2010年には、G☆Bシリーズとしてシングルコレクション(一部アルバムバージョンが含まれており回収騒ぎもありました)「 GOLDEN☆BEST 渡辺満里奈 」を発売とコンスタントにリリースを続けています。
 
 今春には、かつてロマンスも囁かれた小沢健二復活のタイミングに合わせるように、かの小西康陽さん選曲のコンピ盤「 エース 」よりアナログ盤シングルカットという形で1992年の小沢健二プロデュースシングル「バースデイ ボーイ」が「 バースデイ・ボーイ(7 inch Analog)(完全生産限定盤) [Analog] 」として限定リリースされるなど、かつて渋谷系にカテゴライズされていた時分を思わせる展開も繰り広げられましたが、今年の10月までは満30周年のメモリアル・イヤー。
 
 というワケで、30周年を記念し本人が30曲をセレクトしたベストアルバム「MY FAVOURITE POP」の発売が決定しました!
 しかも、三方背BOX仕様でスペシャルディスク付き3枚組の初回限定盤「 MY FAVOURITE POP(初回生産限定盤) 」と、通常盤「 MY FAVOURITE POP(通常盤) 」の2タイプ同時発売となるそうです。
 
 思えばマリナくんのデビューのきっかけは、松本典子と網浜直子がグランプリを獲得した84年のミス・セブンティーンコンテスト。渡辺美里、工藤静香、国生さゆり、村田恵里、藤原理恵、、斉藤さおり、柴田くに子(森丘祥子)、木村(清原)亜紀ら決戦大会出場者のほとんどがデビューしたという驚異の回でしたが、実はマリナくんは地区予選落ちだったのだとか。
 しかし、この段階でCBS・ソニー直系のエイプリルミュージックがスカウト。86年の「夕やけニャンニャン」のオーディションに合格して、おニャン子クラブ入りを果たしてデビューという流れだったそうです。
 
 夕ニャンなどで「深呼吸して」を工藤静香と生稲晃子を従えて歌う姿は、落ち着いたアルトの歌声も相まって、リセエンヌっぽくって他のおニャン子とは一線を画すムード。雑貨屋でも文化屋ではなくオンサンデーズというイメージは、おニャン子のソニー系アイドルならではという感じもしますが、その子や国生とはまた違っていましたから、当時CBS・ソニーよりもアーティスティックでセンスが良かったEPIC・ソニーの所属だったことが大きく関係しているように思います。
 レーベルメイトのLOOKの山本はるきちをはじめ、岸正之、鈴木さえ子ら、おニャン子系ライターとは異なる作曲家陣を迎えていたものの、作詞は秋元康というおニャン子の宿命の制作を余儀なくされていたマリナくん。
 
 その路線をより等身大かつハイセンスに軌道修正し、上質で品のあるポップミュージックという方向性へとシフトさせたのは、おニャン子終了後の4枚目のシングルにして、レーベルメイトの大江千里クンが提供した「ちいさな Breakin' my heart」だったといえるでしょう。
 おニャン子という大きな後ろ盾がなくなり1位記録は途絶えたものの、本人にとっては歌手開眼のきっかけになったというこのナンバー。千里クン独特の「折れた週刊誌」「ニュータウンの群れ」という歌詞が、アイドルには不似合いという理由で「バインダー」や「楡」に変更されたそうですが、それまでのナンバーとは違った詩的な深みといいますか、知的で胸キュンなスパイスが散りばめられていて、まさにEPICのアーティストらしい仕上がりでした。
 後に歌い直すほど思い入れも強かったそうですが、おニャン子アイドルの枠を超え、音楽性を重視するボーカリストへの道を見つけたといっても過言ではないように思います。
 
 後に、堀川まゆみ、山口未央子、上田知華、鈴木祥子、工藤順子、新居昭乃といった女性シンガー・ソングライター勢をはじめ、遊佐未森で知られる外間隆史や、小山田圭吾と小沢健二のDouble K.O.Corporationすなわちフリッパーズ・ギター、佐野元春、大瀧詠一ら多彩なアーティストから提供を受け、独自の世界を構築するマリナくんのターニングポイントだったように思います。
 
 ということで、今回のベストは30年にわたるキャリアから、自選によって選び抜かれた30曲。
 シングル曲としては、デビュー曲の「深呼吸して」から第2弾「ホワイトラビットからのメッセージ」、一般にも知られた代表曲「マリーナの夏」といったオリコンNo.1獲得曲に、前述の「ちいさな Breakin' my heart」や「見つめてあげたい」「夏の短編」「虹の少年」「胸がいっぱい」「幸せの輪郭」に加え、B面曲の「プライベート サマー」「素敵なSaison」「夜と日時計」も収録。
 
 アルバム曲の方は、ファーストアルバム「MARINA」から「裸のクレヨン」「月夜のピアニスト」。セカンド「EVERGREEN」からはタイトル曲に「次のページを開いて」「恋の日付変更線」。クリスマス・ミニアルバム「CHRISTMAS TALES」から大江千里作品「ノーマル」。夏の名作定番アルバム「SUNNY SIDE」からは「八月、最初の水曜日」「Cotton Candy」。「MISS」から「フォトグラフ」、「TWO OF US」から「好きじゃないけど愛してる」、パーフリ作品収録の「a piece of cake!」からは上田知華作品の「夏の日」と外間隆史「夜道」「グラヂオラス」。リニューアルベスト「FUNNY FACE」から「SUNDAY」。「mood moonish」から「青空のコラージュ」「SWINGIN' MOON」。大瀧詠一プロデュースにして今のところ最新となっているミニアルバム「Ring-a-Bell」からは佐野元春作品「ダンスが終る前に」と「約束の場所まで」と、まんべんなくセレクトされています。 
 こうしてみると、90年の自選ベスト「FUNNY FACE」の時と嗜好は変わってないようで、そのブレない姿勢に長年のファンは誇らしいでしょうね。
 
 なお、初回限定盤にはスペシャルディスクをプラス。
 なんと、パーフリ提供のスマッシュヒット「大好きなシャツ(1990旅行大作戦)」(このビデオは実にキュートでしたネ)を野宮真貴とデュエットした新録音が含まれるほか、「バースデイ・ボーイ」のRADIO MIXや、「うれしい予感」のTV Versionという初商品化音源も収録。
 さらには、パーフリ2曲「大好きなシャツ (1990 旅行作戦) 」「レイニー カインド オブ ラブ」プラス「ちいさな Breakin' my heart」「マリーナの夏」「ホワイトラビットからのメッセージ」「深呼吸して」のオリジナル・カラオケも入るとか。マリナファンのみならず、ピチカート・ファイヴやパーフリのコレクターも食指が伸びそうなニクイ選曲となっております。
 ちなみに、本人による全曲ライナーノーツは初回、通常盤ともに収録されるそうですから、やっぱり初回盤を入手するべきでしょう。
 
 余談ではありますが、マリナくんとワタナベズと称されたおニャン子人気ナンバー1の渡辺美奈代は昨年30周年記念ベスト「30th Anniversary Complete Singles Collection」( こちらで紹介)を発表し、今年は写真集付きミニアルバム「 HAPPY STORY 」をリリース。
 
 そして「深呼吸して」でwithおニャン子としてバックで踊った工藤静香は今年がソロデビュー30周年で、記念アルバム「 タイトル未定 」をリリース。静香の場合は、なんと玉置浩二やB’zの松本孝弘らによる全編書き下ろしのオリジナルアルバムになるのだそうです。
 そういえば満里奈と静香って、雑誌でいえば「オリーブ」「mc.シスター」と「ポップティーン」「ギャルズライフ」というほどイメージに違いがありましたけど、お互いその雰囲気のまま成長したのがスゴイ。マリナくんの方も今風のお洒落なオリジナルアルバムを期待したいものですね。
 
 
 

(2017.7.13)
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