シリーズ最新作は、お買い得NM名曲集！

　 「オールスター・ベスト」シリーズといえば、 2013 年にスタートしたソニーミュージック発の人気コンピシリーズ。
 
　80年代ヒット集の「オールスター80'sベスト」＆90年代ヒット集の「オールスター90'sベスト 」、映画主題歌集の「オールスター・ムービー・ヒッツ 」＆ドラマ主題歌集の「オールスター・ドラマ・ヒッツ 」、カラオケで人気を得たナンバーを男女別にした「オールスター・ベスト～女性ヴォーカル～ 」＆「オールスター・ベスト～男性ヴォーカル～ 」（こちらで紹介）というように、ターゲットを絞った年代別のセレクトはもとより、映画やドラマ主題歌、カラオケで人気の男女ヴォーカル別などなど、毎年、細かい切り口で展開されてきました。
 
　そして通算7タイトル目、いよいよ来週発売となる「オールスター・エバーグリーン・ベスト」は、ズバリ“心に響く永遠のニューミュージック名曲集”。
 
　エバーグリーンのタイトル通りグリーンのタータンチェックの装丁で、CD3枚組へとスケールアップ。時代もぐんとさかのぼり、76年から84年に発売されたニューミュージックの名曲を全48曲収録するという、かなり濃ゆくてめいっぱい充実した内容となっています。
 
　しかもウレシイのはお値段。3枚組で税抜き3,600円と、同じシリーズの2枚組と比べたったの600円の差なのですから、とにかくお買い得。CD黎明期ならば1枚でこの価格だったことを思えば、ホントにデフレが継続しているのを実感しますよね。
　やはり配信が主流となり、部屋でもエアプレイというのが普通になっていくのを実感しておりますが、パッケージ派の我々の目が黒いうちは、形として残るCDやレコードを大切にしたいと思っております。なんてったってCDサバイバーなんですからね。
 
　さて、選曲の方は、まさにシリーズ総集編と言えるもので、リアルタイムで聴いていた人にとっては王道中の王道という感じでしょうし、若い世代にとっては名曲ブームで何度となく耳にしたりして知っているであろう名曲がずらり。
　フォークをベースに歌謡曲も巻き込んでそのスタイルを確立していったニューミュージックというものがハッキリ分かる内容になっております。
 
　ニューミュージックというくくりですから、それが天下を取った78～79年のヒット曲が圧倒的。
　フォークから発展していったニューミュージックは何せこの2年の間に、歌謡曲を飲み込んでお茶の間にまで広がった挙げ句、アイドル視されるようになり、ニューミュージック系のアーティストが「明星」や「平凡」の表紙やグラビアのみならず、付録のポスターまでをガンガン飾るようになったのですからね。
　ヒットチャートのランキングでは上位を独占し、テレビの歌番組でも主流となり、さらには職業作家さんの出る幕をなくしたほど。まさにニューミュージックのムーブメントは、軒先を貸してきたザ・歌謡界の母屋も離れも乗っ取った感があったことは事実です。
 
　ちなみに今回のCDには、78年は八神純子「みずいろの雨 」、渡辺真知子「かもめが翔んだ日」、大橋純子「たそがれマイ・ラブ」、ゴダイゴ「ガンダーラ」、世良公則 & ツイスト「銃爪」、柳ジョージ & レイニーウッド「雨に泣いてる…」、松山千春「季節の中で」、南こうせつ「夢一夜」、アリス「チャンピオン」、甲斐バンド「HERO（ヒーローになる時、それは今）」、79年は久保田早紀「異邦人」、チューリップ「虹とスニーカーの頃 」、ばんばひろふみ「SACHIKO」、岸田智史「きみの朝」、桑名正博「セクシャルバイオレット No.1」、ふきのとう「春雷」といったナンバーがチョイスされておりますが、この中で職業作家によるナンバーは早くからフォーク・ニューミュージックのアプローチを行っていた筒美先生の「たそがれマイ・ラブ」だけなのですね。
 
　もちろん単純に楽しめる内容ですが、いま改めてそんなことを思い返しながら聴くと感慨が深まりそう。
　また、大ヒットだけではなく、茶木みやこ「まぼろしの人」など、思わずツボに入ってしまう曲もさりげなくセレクトされていますので、そのへんに注目してみるのも楽しそうです。
 
　みんなが知っていて、愛されたヒット曲って、その時々の出来事とか、風景とか、人々の面影とか、その時代のすべてを刻み込んでいる存在にように思いますけれど、こうしてお盆の準備をしながら聴き返していると、ナツメロで過ぎし日を懐かしんだり、思い返したりすること自体、なんだか先祖供養のようでもありますよね。
 
　実はお盆にもぴったりだった…というオチになってしまいましたが、マジメなハナシ、そんな風な一面も意識して聴いてみたい、オールスターの新作なのでした。