発売40周年で名盤がSHM-CD化、ライブは初CD化！

　井上陽水夫人として、あるいは依布サラサのママとしても知られる石川セリさん。シンガーとしてのキャリアは古く、「涙をこえて」で有名なシングアウトの初期メンバーを経て、71年にキャニオンレコードから「小さな日曜日／八月の濡れた砂」でソロデビュー。
 
　今世紀初頭のソフトロック界隈では、天才・ピコこと樋口康雄の関連アルバムとして72年のファーストアルバム「 パセリと野の花」が絶大な再評価を得ましたが、一般には74年にフォノグラムに移籍して以降のイメージ、特に76年リリースのセカンド「ときどき私は…」からの都会的でアンニュイかつセクシーな石川セリの印象が強いのではないかと思います。
 
　「ときどき私は…」は、まず87年にフォノグラムの“CD 2LP collectors ”という無理矢理な2in1シリーズで何曲か間引かれて初CD化された後、94年にはCD選書化。20年近くにわたりロングセラーを続けましたし、2012年にはタワレコの“Tower To The People”の1枚としても限定再発されてましたので、このアルバムを好む人にとって、ほとんど飢餓感はなかったように思いますが、発売から40年。ここにきてニワカに再注目を浴びている感じです。
 
　先月には「 ときどき私は…」を含むアルバム2タイトルとシングル9タイトルがMEG-CD化されたばかりですけれど、なんと来年2月には発売40thアニバーサリー企画「 ときどき私は……(+5)」として、ブリッジからSHM-CD＆紙ジャケット仕様で再発されることになったそうです！
 
　このアルバム、移籍第1弾シングルにしてNHK少年ドラマシリーズ「つぶやき岩の秘密」主題歌として知られる「遠い海の記憶」がちょっと異質ではありますけれど、ユーミン作品「朝焼けが消える前に」「霧の桟橋」、太田裕美作品と並び松本隆＋ユーミンコンビの初期作の１つである「ひとり芝居」、下田逸郎の名曲「SEXY」、レーベルメイトであり当時「山口さんちのツトム君」で脚光を浴びていたみなみらんぼうとピコによる「フワフワ・WOW・WOW」など、フォークブームに沸く当時の音楽シーンではひときわメロウなシティポップスを中心に展開。
 
　ニューミュージックな「ひとり芝居／さよならの季節」はともかく、ボッサな「フワフワ・WOW・WOW／SEXY」もリカットされたのですから、いかにお洒落なミュージックをやっていたかが分かるでしょう。
 
　バッキングも豪華で、レーベルメイトの矢野顕子をはじめ、松任谷正隆、伊藤銀次、小原礼、後藤次利、村上ポンタ秀一、浜口茂外也 、コーラスにはかのシュガーベイブ（山下達郎、大貫妙子、村松邦男）ら、今や大御所となった一流ミュージシャンがずらりと顔をそろえておりますので、そういう視点から聴いても面白いのではないでしょうか。
 
　なお、SHM-CDとなるブリッジ盤はボーナストラックが充実していまして、「フワフワ･WOW･WOW」のシングルバージョンと2008年の自選ベスト「Re:SEXY」に収録されたOuttakeバージョン、「SEXY」の「Re:SEXY」Re Track Downバージョンとカラオケ、そして「遠い海の記憶」のB面曲「海は女の涙」の計5曲が追加収録されるとのこと。既にこCDを持っている人でも買い換え、買い増しする人も多そうですね。
  
　しかし、今回の目玉は77年の西武劇場でのコンサートと、郵便貯金ホールでのリサイタルからベストパフォーマンスを収めたライブ盤「 SERI FIRST LIVE」の初CD化でしょう。
 
　デビュー曲の「八月の濡れた砂」や「遠い海の記憶」といった初期ナンバーや、陽水との共作にしてサードアルバム「 気まぐれ」のタイトル曲「気まぐれ」、後に高樹澪のカバーヒットによってリバイバルされる陽水提供作「ダンスはうまく踊れない」などのオリジナルに加え、南佳孝のカバー「春を売った女」をはじめ、芝紀美子の「青銅の女」、来生たかお提供の「あしたの風」といったオリジナルアルバム未収録曲も入っています。
 
　また、スティーヴィー・ワンダーの「You Are the Sunshine of My Life」やポール・マッカートニーがペギー・リーに書いたという「Let's Love」（太田裕美さんのフェイバリットナンバーとしてもおなじみ）、スリー・ドッグ・ナイトの「Easy Evil」、ボブ・ディランの「Knockin' on Heaven's Door」といった洋楽カバーが収録されているのも見逃せません。後の洋楽カバーアルバム「 ネヴァー・レッティング・ゴー」でも分かるように、彼女の洋楽カバーはクセになりますからね。
 
　いずれにしても、ライブでこそ生きるセリさん独特の雰囲気で聴かせる歌唱が堪能できるのではないかと思いますので、こちらもマストですね。