祝還暦！豪華ライブに先駆けた記念アルバム！

　あの名曲の向こうに、その人はいた。――今年の暮れも「 FNS 歌謡祭」で八面六臂の活躍を見せた武部聡志さん。昔からのユーミンファンにとっては「オン・キーボード！」と紹介されるミュージシャン兼音楽監督としておなじみの存在です。
 
　ユーミンバンドでは、ハイ・ファイ・セットのサウンドブレーンとしても知られる新川博さんとダブルキーボードとなった後、交代した時を覚えているファンとしては、どんどん太っていった新川さんに比べ、武部さんの知的でスリムな理系イメージが鮮烈だったものですが（ファンの間では新川さんがデブったためルックス的にふさわしくないとクビになった説が濃厚でした…）、35年ほど経った今でもそれがちっとも変わってないことに驚きます。
 
　ユーミンやマンタさんから全幅の信頼を寄せられているのは、３年前にツアーメンバーが一気に若返った際も、武部さんだけは不動だったことでも分かるでしょう。
 
　もちろんユーミン関連だけでなく、数々のヒット曲を手がけたアレンジャーやプロデューサーとしての活躍も知られていますし、筒美京平＆松本隆フリークにとっては、斉藤由貴の「卒業」がここまでエバーグリーンな名曲ともてはやされるのには、武部さんのアレンジの功績も大きかったことは周知の事実でしょう。
 
　そんな武部さんは来年還暦をお迎えになるそうで、誕生月となる2月の27日には、ユーミンをはじめ斉藤由貴、久保田利伸、平井堅、一青窈、JUJUらゆかりのミュージシャンが東京国際フォーラムに集結し「 武部聡志 Original Award Show ～Happy 60～ 」と題したお祝いライブを開くのだとか。
 
　総合演出はマンタさんが担当。進行は亀田誠治、寺岡呼人、宮崎吾朗の各氏がプレゼンターを務めるアワード形式となるそうで、昨秋の村井邦彦さん古希記念の「ALFA MUSIC LIVE」や、古くはBSデジタル開局記念で行われた「松任谷由実ワンナイトコンサート Brothers & Sisters」の得も言われぬゴージャスなひとときを期待してしまいますよね。
 
　個人的には、元ネタであろうバート・バカラックの古希祝いライブ「ONE AMAZING NIGHT」みたいな、歌う側、演奏する側、歌われる側、観る側みんなが至福のライブを夢見て今からうっとりしておりますが、いずれにしてもプラチナチケットになるのは必至。
　一般発売に先駆け既に先行予約がスタートしていますので、行ける環境下にある方はぜひとも争奪戦に加わるべきではないかと思ったりしています。
 
　また、行けない方も嘆くなかれ、当日の模様はWOWOWでオンエアされることでしょうし、記念のCDを聴きながら武部さんの華麗なヒストリーをたどろうじゃありませんか！
 
　ということでアニバーサリー・コンサートの直前に発売となりますのが、CD2枚組のアンソロジー「 日本の音楽と、武部聡志。~ Happy 60 ~ 」。
 
　ユーミンのオールタイムベスト「 日本の恋と、ユーミンと。 」を思わせるタイトルとなっておりますけれど、ユーミン言うところの「煎じ」でも武部さんなら許される感じですよね。
 
　さて、かまやつひろしのバンドを振り出しに、清水健太郎、久保田早紀、寺尾聰らのバックバンドにもいたという武部さんにとって、サウンドプロデューサーというスタンスでの仕事をするようになったのは82年。仙八先生出身の異色アイドル・本田恭章の「0909させて」からだったそうですが、今回のアニバーサリー・アルバムもそこからスタートする模様です。
 
　むろん武部アレンジの存在を世に知らしめた斉藤由貴「卒業」（個人的には「海の絵葉書」が最高峰）はもちろん、武部アレンジ作品では 最も知名度の高い曲ではないかと思う松田聖子「瑠璃色の地球」、TUBEのデビュー曲「ベストセラー・サマー」、久保田利伸のファーストアルバムの1曲目を飾った「流星のサドル 」、ユーミンのファンでありシンガーとしてはフォロワー的存在だった今井美樹「どしゃ降りWONDERLAND」と、今や大御所となった面々の初期ナンバーがずらり。
　そして武部さんが育てた一青窈の「ハナミズキ」、初期から手がけてきた平井堅の「いつか離れる日が来ても」、森山良子のカバーにしてジブリ映画の主題歌となった手嶌葵「さよならの夏 ～コクリコ坂から～」、JUJUによるユーミンのカバー「ANNIVERSARY」などなど、35年にわたるサウンドプロデューサーとしてのキャリアがざっくり俯瞰できる構成になるのではないでしょうか。 
　松尾潔、亀田誠司という両Pらが寄稿したというライナーも楽しみです。
 
　作詞家、作曲家に比べ、なかなかスポットライトの当たる機会が少ないアレンジャーですが、今回の武部さんを機に、萩田光雄さんとか大村雅朗さんとか、いろんな編曲家の先生方のアンソロジーが出ればいいなと思います。
 
　そういえばユーミンのツアーでダブルコールがあった時は、武部さんによるピアノ一本の伴奏につい涙してしまうのですが、ニューアルバム「 宇宙図書館 」をフィーチャーした今回のツアーでも「青いエアメイル」で泣かされております。
 
　そういう意味では、廃盤になっている武部さんのユーミン・アルバム「 PIANO MAN~FOR YUMING LOVERS~ 」や、ユーミンがジャケットイラストを描いた初のソロアルバム「 Clara 」なんかもこのタイミングで再発していただきたいものです。