各社合同、人気コラムの連動コンピ！

　今や各方面でおなじみのアーカイヴァー・鈴木啓之さんが、WEBサイト・ 歌謡曲リミテッドで2014年から連載していた人気コラム「東京レコード散歩」。
 
　昭和歌謡の風景を巡る東京のローカル散歩とでも言いましょうか、都内各所のノスタルジックな紹介とともに、そこにまつわる歌やレコードジャケットも併せて掲載され、なじみのなかった場所でもぐんと身近に感じられたり、あらためてその歌の背景が理解できたり、はたまたジャケットに写っただけの風景をその歌の舞台ととらえたり、いろんな発見がありました。
 
　個人的にやはり同世代という点も大きかったと思いますが、地方で生まれ育ったワタシでさえ、鈴木さんならではの視点や思い出にまるでそこにいたかのような共感を覚えることも多く、つい手持ちの音源を引っ張り出してを流しながら読んだものでした。
 
　そして今年6月には、大幅改稿・加筆修正・新規追加がなされた「東京レコード散歩～昭和歌謡の風景をたずねて」として書籍化。登場するご当地レコードもぐんと増え、読書中にはますますプレイリストやCDラックに手が伸びておりましたが、今度はついにコンピCD化が決定したそうです！
 
　しかもソニーミュージック、ポニーキャニオン、日本コロムビアの3社共同企画として、「東京レコード散歩 ソニーミュージック編 」「東京レコード散歩 ポニーキャニオン編」「東京レコード散歩 コロムビア編 」の３タイトルが同時発売されるとのこと。
　まさに鬼に金棒、書籍と音盤のダブルで楽しめるようになるのですね。
 
　CDにも書籍やWEBと同様、戦後間もない復興期の東京から世界の注目を集めるメトロポリス・TOKYOまで、時代やジャンルを問わずさまざまな東京のご当地ソングを収録。
　選曲は鈴木さん、監修は歌謡曲リミテッドが担当なさるそうで、単に書籍で紹介した歌のみならず、さらにパワーアップした内容になるようですが、ウチ的に注目したいのはやっぱり大好きなビッグネームが勢ぞろい、時代的にもぴったりマッチした昭和40年代後半～50年代中心のソニー編でしょう。
 
　WEB時代からコラムで紹介されていたよしだたくろう「高円寺」、ふきのとう「雨ふり道玄坂」（渋谷）、横田早苗「ウ・ラ・ギ・リ・マ・ス」（吉祥寺）のほか、中原理恵「東京ららばい」、藤圭子「新宿の女」、内山田洋とクール・ファイブ「東京砂漠」、ハイ・ファイ・セット「土曜の夜は羽田に来るの」（羽田空港）など書籍に掲載された大ヒット曲をはじめ、リオのパラリンピックの閉会式をきっかけに再注目を集める野宮真貴のセルフカバー「東京は夜の七時」や、“TOKIO”でおなじみ、YMOの「テクノポリス」、カバーされ続ける平山三紀の「真夜中のエンジェル・ベイビー」（原宿、六本木）といった有名なナンバーも入ってはいますが、サブタイトルに麻生よう子が昭和49年のセカンドアルバムで発表した「ウィークエンドの公園通り」（渋谷）を持ってくることからして分かるように、レアトラックやビッグネームの知る人ぞ知る名曲が満載なのです。
 
　例えばにしきのあきらは46年のカバー曲「銀座の子守唄」、天地真理は48年の「銀座ひとりぼっち」、南沙織は50年の「六本木」というアルバム曲ですし、シングルにしても五輪真弓は52年のB面曲「東京」、太田裕美は54年の「ガラスの世代」（六本木）、上田正樹は56年のCBS・ソニー移籍第1弾「東京エキスプレス」と、いずれもCD化済みではあるもののコンピ盤初収録となるような楽曲ばかりがチョイスされています。
 
　さらに、54年の朝丘雪路＆ランブラーズのシングル「銀座ルネッサンス」、55年の西田敏行のアルバム曲「新宿ラブストーリー」といった今回初CD化となるのではないかと思う作品も収録されておりますし、前述の横田早苗「ウ・ラ・ギ・リ・マ・ス」や、歌唱力に定評のあった85年組アイドルの村田恵里「TOKYO,CITY OF WONDERS」など、マイナーアイドル好きの方もニンマリしてしまうナンバーも入っています。
 
　はてさて、読んでから聴くか、聴いてから読むか、読みながら聴くか。いろんな楽しみ方ができそうな好企画ですが、携帯プレーヤーに入れてご当地を散歩しながら聴くのが理想のような気がします。
 
　2020年の東京オリンピックに向け、また大きく変貌を遂げるでしょうし、今の東京を記憶にとどめながら歩くのもよさそう。
　むろん変わり続けることが東京の宿命ですし、昔の光景を重ねつつノスタルジックに聴くのも感慨深いですよね。個人的には、これに桃井かおりの「東京慕情」をプラスして、最も東京に魅力を感じていた80年代半ばの散歩を楽しみたいと思います。
 
　3タイトル合わせると時代の幅がかなり広くなるので全部そろえるのは躊躇してしまう人が多そうですけど、そんな人ほどまずはコラムをどうぞ。全部聴きたくなること請け合いですから！