ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#804
渡辺美奈代/30th Anniversary Complete Singles Collection
2016.7.27発売、MHCL-303945、¥2,778+税)  *2枚組、Blu-spec CD2

おニャン子No.1、30周年で初のシングルコンプ!

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 おニャン子クラブ会員番号29番、渡辺美奈代。
 ♪美奈代の「み」の字はみんなの「み」、 美奈代の「な」の字はなかよしの「な」、 美奈代の「よ」の字はよろしくの「よ」(秋元康作詞、見岳章作・編曲「会員番号の歌」より)と歌ったように、秋元さんも太鼓判を押すおニャン子きっての正統派アイドルNo.1。
 
 おニャン子でなければデビューできなかったであろー皆さんとは一線を画す感じで、おニャン子でなくても文句なしのビッグアイドルになっていたと予想できる逸材だったことは、こニャン子の皆さん以外にとっても周知の事実でしょう。
 それはおニャン子オーディションの前にCBS・ソニーのSDオーディションで合格していたアイドル候補生でしたからトーゼンといえばトーゼンなんですけれど、その中でもグンバツの魅力を放っていたんですよね。
 
 そんな美奈代は85年11月におニャン子に加入。翌年初頭には同じソニーだった国生の「バレンタイン・キッス」で“with おニャン子クラブ”としてフィーチャーされ、7月には満を持してソロデビューしたワケですが、それから今年でちょうど30年。
 
 彼女の場合、結婚、出産を経てもママドルとして現役バリバリで、周年などのコンサートもコンスタントに開催。近年では息子さんも芸能活動をスタートさせるなど、話題に事欠きませんでしたが、その分、再評価されにくかったのも事実です。
 
 しかしですね、今回の30周年は違います!
 2枚組による初のシングル・コンプリート・コレクション「渡辺美奈代 30th Anniversary Complete Singles Collection 」が発売となるのですから!
 
 86年から96年まで、合計17枚のシングルをリリースした彼女ですが、順を追って紹介しますと、まずは言わずと知れたおニャン子時代。
 「夕やけニャンニャン」が終了する87年夏まで、秋元&ゴッキーコンビによるおニャン子プロジェクト主導で制作された5枚、すなわち王道アイドルポップスのデビューシングル「瞳に約束/少しおませな恋」から、CBS・ソニーのお家芸ともいえる文芸的哀愁路線の「雪の帰り道/うさぎの耳」、打って変わってオモチャ的ロリータ性を際どくキッチュに打ち出した「TOO ADULT/カメオのコンパクト」「PINKのCHAO/いじめないで」、そしておニャン子終了直前にして秋元の手を離れた哀愁路線「アマリリス/神様のタイミング」 です。
 
 こうして見ると、事務所のパイセン・キョンキョンを彷彿とさせる変幻自在な印象といいますか、より幅の広さが求められた80年代後半アイドルでも屈指の素材だったことを証明していると言えるようですが、特筆すべきは実績。1週だけであろうと、すべてがオリコン初登場1位をマーク、しかも5枚連続で達成してるのですからね。このレコードは当時の新記録でしたし、誰がどんなにやっかもうとおニャン子トップは名実ともに渡辺美奈代だったのでした。
 余談ですが、最初は地味目でおとなしいというか、自分の魅力をそこまで自覚していないようなタイプだと思っていましたが、ソロデビューして以降そういう感じがなくなって、気がついたらどんどんケバくなって悲しくなったことを思い出します。
 
 夕ニャンが終わると魔法が解けたようにショボくなってしまうおニャン子が多かった中、逆に楽曲のクオリティが高くなっていったのも美奈代の特長でしょう。
 前作でB面を手がけた遠藤京子が昇格した80年代後半的フレンチポップス「ガールズ オン ザ ルーフ/雪華模様」しかり、ひたむきなナチュラルさと計算高い媚びという少女性の両面をいかんなく表現した「両手いっぱいのメモリー/グッバイBOY」しかり。
 この2枚を過渡期として、アイドルシンガー・渡辺美奈代はさらなる脱皮を図ります。
 
 それが、ムーンライダーズの鈴木慶一さんと、ソニーのディレクターにして渚十吾だったという黒田日出良さんのコンビによる5枚。
 88年5月の「ちょっと Fallin' Love/ほめてよ Hold Me Tight」から「抱いてあげる/Tururu」「いいじゃない/ラストダンスはあなたに」、超名曲ですが当時のご本人のキャラと歌詞の内容が興味深い「愛がなくちゃ、ネッ!/キッスの蕾」、そして89年6月の「WinterスプリングSummerフォール/OH,YES!」の流れは、まさに圧巻。
 
 オールデイズの雰囲気も強く、ポップス愛好家には当時から大好評で、ビートルズにおけるメリー・ホプキンのよーかどーかは知りませんが、ケーイチさんのよき表現者であったのは確か。
 そのへんは、同時期に展開された野田幹子と比べると、とてもわかりやすいのではいかと思っておりますが、この時期の作品はアルバム(「My Boy 歌え!太陽 -a summer plase- 」「恋してると、いいね -the Heart of Love-」)と併せて、孫子の代まで聴き継ぎたい名曲ぞろいではないかと思います。
 正直なところ、後に出たW渡辺の満里奈と大滝詠一さんのコンビのアルバムなんかより、ずっと名盤ですぞ。
 
 せっかくのケーイチさんプロデュースだったのですから、もっとアーティスティックにシフトしていったら結果が違ったのかもしれませんが、セールス的には振るわず、本人もたぶん気乗りしなかったというか、ハイセンスでクオリティの高い音楽をやっていたという実感がなかったことも大きかったように思います。
 
 加えて、正統派アイドルが正当に評価されず、従来のやり方では生き残れなくなってしまった時代でしたしね。
 皮肉にもその引き金を引いたのはおニャン子であり、トップに君臨した美奈代はそのブーメランを一手に引き受けてしまった感もありました。
 秋元さんの因果が美奈代に報い…というワケもなかったのでしょうが、ちょうどこの頃から志村けんの寵愛を受け、ファミリーの一員になったりして、バラドル活動がメインになっていったように思います。 
 
 そんなワケで、キョンキョンや、オギノメちゃんでヒットを飛ばしていた元コスミック・インベンションの井上ヨシマサを器用して方向転換。89年11月の「恋愛紅一点/愛するより愛されたい」ではバックダンサーを従えてイマドキの感覚にイメチェン。時代の先端をいくサウンドに変わります。
 しかしバンドブームに押されてアイドル歌手のヒットが困難になった時代、リリースのペースは落ち、90年に「ピチカート・プリンセス/夜明けのヒッチ・ハイク」、91年に「HANAKOの結婚/チャンスかもしれない」と、年1枚がやっとという感じになるのですね。
 ドラマなどのタイアップが付いて結構露出したとしても結局はバラドル以上の需要はなく、歌手としてはいったんピリオド。ソニーとの契約も終了します。
 
 その後も時々出演するテレビ番組がらみで新曲の発売はあり、95年には志村けんのバラエティー番組のテーマ「オフロでGO! /ごめんね・・・」をファンハウスから、96年にはアシスタントを務めた「新婚さんいらっしゃい!」の「いろいろあったけど/長い目で見てね」(Minayo名義)をキングから、それぞれリリースしています。
 
 というのがアイドルシンガー・渡辺美奈代の大まかな軌跡ですけど、今回のベストはソニーを離れて以降の2枚のシングルも網羅した、彼女のシングル曲すべてがそろうホントの全曲集。
 人気、実績ともに「ゴールデン☆アイドル」シリーズにふさわしいアイドルだけに、通常2枚組でのリリースが残念な気もしますが、これまでのベストではなぜかA面さえも完全収録にならなかったので、ソニー時代以外も網羅したベストはホントに待望といえそう。
 おニャン子のゴイスーなBOX(こちらで紹介)や単品CD(こちらで紹介)で美奈代の魅力を再認識した方も、美奈代の本領発揮はおニャン子以降ですので、ぜひご一聴いただきたいと思います。
 
 なお、初回盤には、9月25日に開催が決定したソロデビュー30周年記念コンサートのチケット優先購入予約券と、コンサート終演後の握手会参加券が封入されているとか。参戦をお考えの方はいち早い入手をお忘れなく!
 
 

(2016.5.27)
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