市販では初となるシングルAB面コンプ集！

　一昨年オーダーメイドファクトリーで企画され、すんなり達成したものの商品化に時間がかかり、昨春にやっと発売されたのりりんのシングルAB面初コンプリートとなる２枚組「 GOLDEN☆BEST Limited-松本典子-」（こちらで紹介）。
 
　OMF専用のG☆Bラインであるリミテッドシリーズ、Blu-spec CD2仕様でのリリースでしたが、ここに来て市販品のG☆B「GOLDEN☆BEST/松本典子オールシングルコレクション 」も発売されることになりました！
 
　文字通り、85年のデビューシングル「春色のエアメール／秘密の17才」 から91年の「Kissが届かない ／今夜も眠れない」まで、全13枚のシングルAB面曲を収録したオールシングルコレクション。
　ホントは真っ先に出て欲しかった市販ベストが、いちばん後になった感じですが、今回はなんたって店頭に並ぶ市販ですからね（OMF商品はディスクユニオン店頭での取り扱いをスタートしています）。
 
　これもここ数年、OMFで再CD化された旧譜が好調だったり、それを受けて入手困難になっていた市販ベスト「アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 松本典子 THE BEST～Purity」が追加プレスを重ねたり（こちらで紹介）、根強いファンが支持したおかげだと思います。
 
　良質のポップスが好きな人にはオススメのクオリティですから、シングルAＢ面は確実に押さえてきたいというアイドルファンはもとより、のりりんに志村けんファミリーのバラドルイメージしか持っていないという人も買って損はないんじゃないかと思います。
　なぜなら、スタッフはCBS・ソニーの若松陣営。そう、あの松田聖子を手がけたチームだからです。
 
　シングルAB面それぞれに毛色が違い、デビュー盤「春色のエアメール ／秘密の17才」はEPOと小坂明子、セカンド「青い風のビーチサイド／ジンジャー 」は岸正之と矢野顕子、サード「さよならと言われて／デ・リ・ケ・－・ト」は松任谷由実（呉田軽穂）と後藤次利というように豪華なソングライターが提供。特に、勝負曲にしてレコ大新人賞を受賞した「さよならと言われて」は銀色夏生＋ユーミンの傑作として誉れ高いナンバーです。
 
　地味でおっとりしたキャラや、か弱いウィスパーボイスのせいもあってか、歌手としての成果や鮮烈な印象を残すことはできませんでしたが、2年目も着実な印象。
　久保田利伸と三木たかしをカップリングした第４弾「虹色スキャンダル／感性のままに」から低迷したといわれますけど、出演映画の公開が遅れてしまった影響が大きかったのも確か。それよりも、歌謡曲系の職業作家も、ダンス系のシンガー・ソングライターも、どちらもソツなく歌える力量には関心します。
 
　ただ、続く「NO WONDER／三枚の写真」を聞いても、正直、ファンキーなダンスチューンが合っているとは言えませんし、どこをどう聞いても三木聖子、石川ひとみと歌い継がれ、今や風街の名曲入りも果たした「三枚の写真」の方が合っていますけど、オギノメちゃんをきっかけにアイドルポップスもダンスナンバーが主流になった頃ですから、タイミングが悪かったと言わざるを得ません。
 
　そういう意味では、中島みゆきと三木たかしを表裏にした「儀式（セレモニー） ／秋桜化粧」が最大の勝負曲でしたが、おニャン子を経てアイドルの定義が変わり、バンドブームやボーカリストブームを経てメッセージ性のない歌は支持されなくなった時代。何人かのトップアイドル以外、大ヒットを飛ばすこと自体至難のワザだったのですから、これもタイミングが悪かったとしか言えませんね。
 
　それにしても、当時、ユーミンとみゆき両方に書き下ろしてもらったアーティストは郷ひろみ以来ということで話題になりましたが、いずれも気負うことなく歌いこなせていることに驚きます。のりりんのボーカリストとしての力量はかなりのものがあると思いますね。
 
　キム・ワイルドと金井夕子（尾崎亜美作品）という洋邦のカバーシングルとなった「KEEP ME HUNGING' ON／パステル・ラブ」にしても、実はとても器用な人だったということが確認できるでしょう。だからこそ、志村けんに可愛がられバラドルとしても重宝されたのでしょうけどね。
 
　とここまでがコンスタントにリリースされたシングルで、以降のシングル、すなわち「今夜はパラダイス／P-Rondo」から、来生姉弟作品をB面に回した「雨と水曜日／想いの破片」、中崎英也がメインライターとなってからの「天使が棲む島／夜明けまでのマーメイド 」、年賀はがきのキャンペーンソング「初恋十二単／春から小町 」、「たったひとりの恋人／想い出にしたかった 」、そして自作詞にMAYUMI（堀川まゆみ）が曲を付けた「Kissが届かない／今夜も眠れない」までは、歌番組ではなくバラエティー番組で披露するケースがほとんどだったと思います。
 
　そういう意味では、松本典子という人は、80年代半ばの正統派アイドルが冷遇されたおニャン子アイドル全盛期を経てアイドルの定義自体が変わり、正統派アイドルの存在価値すら揺らいだ時代のアイドルポップスを体現した存在とも言えそう。
　それを2017年の今、検証してみるのも面白そうです。
 
　今回も最新リマスタリングでBlu-spec CD2、ピクチャーCD仕様を予定しているそうですから、買い換え、買い増しの人もお忘れなく。