ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#827
三田寛子/GOLDEN☆BEST コンプリート・シングルズ
2017.4.26発売、MHCL-30454、¥3,000+税) *Blu-spec CD2、3.22→4.26に発売延期

梨園の妻の鑑!アイドル時代のシングル完全収録!

 昨年の親子四人同時襲名披露に東奔西走した姿や、その前の不倫報道への見事な謝罪の様子など、メディア露出するたびに梨園の妻の鑑というイメージが定着した三田寛子さん。
 
 今となっては、彼女が“花の82年組”の1人で将来を嘱望されたアイドルだったことを忘れてしまいそうになりますが、今年は35周年。初のシングルコンプ集となる「 GOLDEN☆BEST コンプリート・シングルズ 」が登場します!
 
 彼女の場合、オーダーメイドファクトリーでオリジナルアルバムはすべてCD化済み( こちらこちらこちらで紹介)で、アルバム未収録のシングル曲もボーナストラックとして追加され、全音源のCD化が実現していたようですが、市販CDとしてはなんと15年ぶり。初の2枚組、ブルスペ2でのリリースとなります。
 
 思い返せば81年のTBSドラマ「2年B組仙八先生」でシブがきトリオとともに注目を集め、年季が明ける82年3月に歌手デビュー。キャニオンの堀ちえみ、ビクターの小泉今日子、TDKの新井薫子ら強力な大型新人による熾烈な3・21デビュー戦争でも、一歩先行く知名度やカルピスソーダとのCMタイアップなどを武器に、トップの期待度だったのです。
 
 百恵ちゃんとバトンタッチするように聖子が大ブレイクしたCBS・ソニーにおいても、ポスト百恵の後継者争いに敗れたご本家・酒井政利プロデューサーが復讐に燃えたかのように力を注いでいたアーティストでした。
 その証拠に、楽曲の布陣も超豪華。阿木燿子+井上陽水によるイメージ通りのデビュー曲「駈けてきた処女」から、アイドルポップスを突き放したような唯一無二の路線を進んだのですからね。
 
 他の82年組がファンシー文具だとしたら、三田寛子はブランドのステイショナリー。篠山紀信撮影のポートと相まって、南沙織から山口百恵へと継承されたCBS・ソニーの由緒正しいDNAを、聖子よりも正当に受け継いだアイドルシンガーとして活躍するはずだったことを、もういちど言っておきたいと思います。
 
 であるからして、「駈けてきた処女/何故ですか」から始まるシングルは名曲ぞろい。
 坂本龍一アレンジの超難曲「夏の雫/ふたりぽっち物語」、リバイバルブームを背景にした南沙織&ブレッド&バターをカバーした第3弾の勝負曲「色づく街/ピンク・シャドウ」、一風堂の見岳章を起用した「ひとりぽっちの卒業式/カサノヴァ・サンバ 」までが第1期という感じですが、特筆すべきは「夏の雫」と本人補作詞が物議を醸した「ピンク・シャドウ」。
 はんなりおっとりなイメージとはうらはら、圧倒的なグルーブ感こそ、実はシンガー・三田寛子の真骨頂ではなかったかと思います。
 
 第2期は、花王トニックシャンプーのCMで中日ドラゴンズの田尾選手とデュエットし、村下孝蔵のブレイクに一役買ったカバー「初恋/季節のファンタジー」がスマッシュヒット。村下さんからのお礼みたいな書き下ろしにして出演映画「みゆき」の挿入歌にもなった「野菊いちりん/秋麗」と、はんなり哀愁系のイメージが定着しました。
 
 そして3年目の84年からですが、迷走という感じは否めません。「春の冒険/ガラス窓」は主演ドラマ「激愛・三月までの…」の主題歌になる予定がタイアップはつかず、次の新曲候補「貝殻物語」はお蔵入りになって「恋するメトロ/20才の前で」をリリース。明るくおきゃんにイメチェンを図った流行のテクノ歌謡と、小椋佳が書いた花王愛の劇場「わが子よIV」主題歌のフォーク歌謡をカップリングするという異色さを見せたかと思えば、また哀愁はんなり路線の「ときめき おぼろ/見つめてほしい」に戻し、さらには八木美代子の「つ・ま・ん・な・い」をリメイクした「死ぬまで笑ってて… /誘惑世代」、そして出演ドラマ「家族ジャングル」の主題歌とお蔵入りになった曲をカップリングした「ひとりぼっちのクーデター/貝殻物語-Once Upon A Summertime-」という感じで、何だかワケわかめな展開となったのでした。
 
 思い詰めるような茫洋とした雰囲気で迫ったかと思えば、ハイテンションでボケをかましたり、天然の不思議ちゃんなのか、計算高い京女なのか、イメージがわかんない感じだったのは確かです。
 
 で、86年には起死回生を賭けた中島みゆき作品「少年たちのように/愛される花愛されぬ花」をリリースしますが、成功にまでは至りませんでした(個人的には「愛される花愛されぬ花」をA面にしてたら違ってたような気がします)。
 
 結局花開いたのは「笑っていいとも!」のお菓子大好き!なバラドルのイメージですが、歌では京風はんなりと行ったり来たりしつつ、「恋ごころ/あまい あまい ラヴレター」と続き、ラストシングル「TA-TI-TA ~涙のマリオネット~/3度目のHONESTY」で歌手生活にピリオドを打ったのでした。
 
 というシングルの軌跡をつぶさに追える、初のAB面コンプ集。バラエティーにあふれ、いろんな楽曲を品よくこなす感じは、やっぱり大器ですよね。個人的には、三田寛子の抜群のグルーブ感を実感していただきたいと思います。
 
 そういえば、こないだの「サワコの部屋」でのおしゃべりでも実感しましたが、35年たった今でも天然の不思議ちゃんなのか、計算高い京女なのか、イメージがわかんない感じだったのは確かどすえ。
 
 

(2017.1.27)
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