オススメ復刻盤「TMネットワーク/Self Control」

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#186

TMネットワーク/Self Control

(2007.3.21発売、MHCL-1038、¥2,520) *TM NETWORK RESION OF ORIGINAL ALBUMシリーズ

思い渦巻く、或る個人的バブルの象徴作

 先日、映画「バブルへGO!」を行きがかり上拝見して、ドゥワーッとよみがえってきたのであります。
 何かって、それは20才前後の青春時代の思い出。それも数々のメロディーとともに。

 ワタシの場合、過去の音楽を聴いて当時の映像を脳内によみがえらせるのは日常ですが、逆のパターンはあまり経験がなかったのでビックリ。
 とにかく映画を見てるんだけど、脳内のある一部分はタイムマシンのごとく、あの時代へ帰っていったのでありました(一緒に見た人が同い年、っていうのも効果大だったと思う)。

 その中心に君臨し、プラズマ光線みたいな閃光を放っていたのが、TMネットワークだったのです。

 TMとの出会いは、80年代半ば、EPIC・ソニーが主催して各地のレコード店を巻き込んで開いてた「BEE」という会員制のレコード&ビデオコンサートでした。

 確かTMは1stを出したばかりでワタシは高校の制服で見ていたような気がするけど、イケメン2人をフューチャーしたYMOチルドレンみたいな感じの音楽に、その時はさほどときめくことはなかった。ステッカーやら、ポスターやら、バッジやら、いろんな販促グッズをいただいたのだけど…。
 ちょうど大江千里クンを応援してる真っ最中でしたし、千里クンの曲に参加してるバックミュージシャン的な位置づけでしたし。

 しかし、何年かして出たこの曲で一気にKOされているのであります。
 それが「Self Control(方舟に曳かれて)」。そう、TMの出世作です。とにかく10代のハートにグサッと来て、いろんな意味で泣いた泣いた。

 その後はコンサートにも何度も行って、ウツとファンの“ALL RIGHT?”の掛け合いを楽しんだり、踊りまくりましたっけ…。その後のコムロ御大の活躍はご存じの通りでしょう。

 これまでにもTNは何度か再発されていますしBOXも出ていますが、今回の紙ジャケ復刻は、「 RAINBOW RAINBOW (完全生産限定盤) 」「 CHILDHOOD'S END (完全生産限定盤) 」「 TWINKLE NIGHT (完全生産限定盤) 」「 GORILLA (完全生産限定盤) 」「 Self Control (完全生産限定盤) 」「 humansystem (完全生産限定盤) 」「 CAROL A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991 (完全生産限定盤) 」「 DRESS (完全生産限定盤) 」という80年代のLP全8タイトル。

 どこまでもLPを忠実に再現したモノとなっていますが、ワタシにとってのTMはLPではなく、やはりCDそのものですね。
 それはTMがデジタルサウンドを頒布したという意味ではなく、このアルバム「Self Control」こそが、ワタシが初めて買ったCDだから。

 ワタシはCD導入がかなり遅く、プレーヤーを買ったのが87年春だったのです。
 それで、このCDとシンシアのベストを同時に買った…。なのに、ワタシはいつかの引っ越しの際、このCDを処分してしまった。
 と書いたら、記念の初CDを手放した後悔みたいな感じですが、そんなこと、これまでこれっぽっちも思ったことなかった。少なくとも先の映画を見るまでは。

 あの時代。その時々はきっととても楽しかったはずだけど、振り返るとバカみたいで恥知らずなコトばっかりだし、自分の中でもなんとなくスルーしたい時代だった。それは、片隅であれ、自分が時代の主流の中にいた事実とぴったり重なっているから、余計にタチが悪いのかもしれない。

 そう考えて、ワタシはあっと息をのむ。よくオールドファッションな格好をするオジさんやオバさんを、自分が最も輝いてた時代を引きずった人、美しい思い出から抜け出せない人、なんてバカにする風潮があるけれど、そうではなかったのだ。
 彼らは、生の移ろいをしっかりと受け入れ、自然の生き物としては当然の姿で老いているのではなかろーか。時流を敏感に察知することが美徳で、死ぬまで青春とかアンチエイジングとか、若々しく見えることが良しという昨今だけど、それって時の流れをはじめ、自然の摂理に逆らって生きているのではないか。
 戦後以来、ワタシたちはカネやモノに主権を握らせ、自らもモノになってしまうような生き方をしてきたけど、もういい加減にシフトしなきゃいけないのではないだろーか。誰のせいでもないのだから。

 とりわけ色濃かったあの時代のことを、振り返る時、みんな恥ずかしさのせいにして、時には目をそらしたり、時にはあざ笑ったりします。先の映画にもそういうニュアンスは含まれていたように思います。
 でも、ワタシは確かにあの日々を生きていた。まだフクザツな思いは残るけど、あの日から心のどっかにしまったままだったものを取り出して、きちんと見つめてみよう。今度はしっかり受け止めて、今日からもっと素直に。

 熱い気持ちのまま、ワタシは思う。旧譜を聴くという行為は、過去の自分と向き合うことなのだと。そしてそれは、一つ一つ、いろんな確認を重ねてゆく作業だということを実感する。もちろん、明日を生きてゆくための。

 あれ、TMへの悔恨やらバブルへの屈折した羞恥心やら、つい感情的になっちゃって、なんだかTMの紹介にならず、マジでヘンなことを語ってしまった…。でも、今のホントの気持ちです。

(2007.2.18)

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