シングルA面コンプ!カナリー・ガールの軌跡
ウチのサイトでは、よく「取り上げてほしい!」というリクエストをいただくのですが、開設以来、中森明菜と並び最も多いのがこの人、河合奈保子さんなんですね。
ちょこちょこと書いたりしてきましたし、身近に大ファンがいたせいでデビュー以来アルバムも含め結構聴いてますし、ナマで見たこともあります。だから別にシカトしているワケではないのですが…。とはいえ3部作ボックス「 河合奈保子 BOX シングル・コレクション Jewel Box~Naoko Singles Collection 」「 河合奈保子 Jewel Box 2 Naoko Favorite Collection 」「 Pure Moments ~ NAOKO KAWAI DVD COLLECTION 」も買ってませんから、そう思われても仕方ないか。
でも、今回、暮れのシリーズものの一環かどーかは存じませんが、2枚組と買いやすい初のA面コンプ盤「 河合奈保子・しんぐるこれくしょん 」が出ることになりましたので、紹介がてらサラーっと思い出を追ってみましょう。
奈保子さんが世に出たきっかけは、ご存じヒデキの弟・妹募集オーディション。ワタシも月刊明星での告知をしっかり覚えてます。
デビュー曲「大きな森の小さなお家」は“大きな胸の…”とか言われたワリにはいい歌だったし、カップリングの「ハリケーン・キッド」も大好きでしたし、初見で譜面をスラスラ読んで作家陣を驚愕させた逸話も話題に上りました。
しかし、ワタシがさほどときめかなかったのは、その写真うつりだったのです。デビュー曲のジャケットもさることながら、決定的だったのが、80年初夏の明星に載ってた新人大集合ページなんですね。
まだ奈保子さんをTVで見る前だったので、余計にキョーレツだったのですけど、すっぴんで赤みが差したそのお顔は、やたら鼻が高く見えて、ワタシは童話に出てくる魔女を連想してしまったのでした…。
ヨシリン、聖子の次に応援する人は、スタ誕の柏原よしえと決めていたこともあって、奈保子さんは歌はいいけど…という感じでした。
結局、その印象は後々まで持ち越すことになりまして、第2弾の「ヤングボーイ」(B面の「青い視線」も大好き)ではすっかりカワユくなったのですが、ナハハ笑いを苦手に思ってしまったり…。
やっぱ、コロムビアならではのジャケットのダサさというか、曲も含めて、奈保子さんにのめり込む日は来なかったのでした。
と言っても転落事故の時は心配したし(事故の直前に撮られた、足が消えた心霊写真をワタシは忘れない)、復帰後の「ラブレター」は応援の意味を込め買っちゃいましたし、「スマイル・フォー・ミー」「ムーンライト・キッス」なんかもけっこう好きでした。
そういや、「夏のヒロイン」でフォークダンスを踊ったこともあったなぁ。それと、「Invitation」を初めて聴いた時にはガーンと来たものです(「けんかをやめて」はキライでしたけど…)。
また、筒美イメチェンの「エスカレーション」も名曲ですし、モロ「ケアレス・ウィスパー」の「北駅のソリチュード」も実は好きなんですけど。
シングルでワタシが一番好きなのは、やっぱし「ジェラス・トレイン」。あの疾走感とファルセットのスキャットは、生真面目な奈保子さんにしては驚くほどの洒脱さで、すごくキマってます。
と言いつつも、アイドルとしては「ストロー・タッチの恋」や「微風のメロディー」がキャラにホントにぴったりで、最も出来が良かったのではないかと思っています。ファン以外の印象にはほとんど残ってないようですけど、このへんを貫いてたら、もっと後世に残る存在感が出てたかも。
そういう意味からも、アクのなさで好き嫌いが分かれることの少なかったの奈保子さん。
そのへんは、同期の聖子やよしえと比べるまでもないですね。ワタシも、D・フォスターの「デイドリーム・コースト」や筒美作品の「さよなら物語」など、アルバムも愛聴するほど、奈保子さんには抵抗感がありませんが、ただ一コだけイヤなシングルがあるのです。
それはルパン三世の映画の主題歌がカップリングになった85年の「デビュー~FLY ME TO LOVE」です。もうアイドル人気もピークを過ぎてましたが、この曲で唯一のオリコン1位を取ったんですよね。チャートの狭間での突然の快挙に、ワタシたちだけでなく周りの奈保子ファンみんなが驚いたものです。
コレ、アニメファンが買ったことを差し引いても、なんだか釈然としなかった。まだ、チャートがおニャン子に食い荒らされる前だったし、熱心なファンでさえ喜ぶどころか戸惑ってたものですから、ワタシは本気でイニシャルの操作だと疑ったものです。
奈保子さんにも曲にも責任はないのですが、それがイヤにさせる原因となったのは確かですね…。
このへんが契機というか、その後の作曲家的な活動にまったく関心が持てなかったこともあって、以降の奈保子さんのことはフツーに知ってる程度ですのでアレコレ論じることができません。あしからず。
当時でもひと昔前のニューミュージック風な活動だなと思っていましたが、改めて聴くと、この時期からの方が音楽としては素晴らしいのでないかという気もしますね。
この流れが最近の音楽家としての復活(新曲「naoko 音/blue」「naoko 音/orange」をiTunesで配信)にも起因しているんでしょう。だからと言って、積極的に聴いたりするワケではないし、iTunesでは試聴すらしてないんですけど…。
と、なんだか散漫で、ファンの皆さんには申し訳ないのですが、この散漫さ、まとまらなさ加減が、ワタシの奈保子さんへの思いということで…。失礼いたしました。
そんなワタシの個人的な思いはともかく、お買い得で奈保子さんの軌跡を余すところなく追えて、志向性の変遷や次第に目覚めてゆく音楽的自我をハッキリ確認できる好ベストに違いはありません。
小鳥のように歌い続けたカナリー・ガールの、丁寧で真面目な歌唱の数々をぜひお楽しみください。
(2006.9.19)
*しんぐるこれくしょんシリーズとして発売されます。また配信のみだったインスト曲がCD「
nahoko 音
」として11月28日にパッケージ発売されます。