ナイスな選曲で聴く、イルカの良心
かつて中島みゆきに「あの人は男子中学生だと思っていた」と言われたことも、今となっては懐かしい思い出。
そんなイルカが、シュリークスから数えてデビュー35周年を迎えます。
このベスト「 イルカ ベスト 」は記念盤とは銘打ってはいないみたいですけど、お祝いの気持ちを込めてご紹介いたしましょう。
イルカは、クラウン所属ならでは、演歌歌手のようにベストがドンドン出ていますし、25周年の時には3枚組のベストも発売されていますから、そっちと比べるとボリューム的には物足りない気がしますよね、一見。
でも、収録曲をよく見てみて。今回のベストはシングルにとらわれることなく、アルバムからの名曲が多数入っているわ、イルカの軌跡を時系列に並べてるわでとても良い構成ではないでしょうか。
ま、単なるワタシ好みな選曲だけかもしれないので、ごめんしてね。
ソロデビュー曲「あの頃のぼくは」をはじめ、永遠の名曲「なごり雪」「雨の物語」「サラダの国から来た娘」「海岸通」「Follow Me」などのヒット曲から、シュリークス時代のメルヘンを焼き直した「くじらのスーさん空を行く」(大好き!)、郁恵ちゃんもお気に入りだと言っていた「バラのお嬢さん」(このエピソードから「夏のお嬢さん」は生まれたらしい…)、みんなのおかあさんになりたい「いつか冷たい雨が」、名曲アルバムにも入れた「我が心の友へ」、住友生命のCMソングでおなじみ「まあるいいのち」、かのスピリチュアル・カウンセラー、江原啓之さんもカバーした「ラピスの丘で」、シングルにもなった「真冬の天使」、2002年のセルフカバーシングル「なごり雪」から日本語&韓国語をミックスしたバージョン、そして実のパパと共演したジャズアルバム「Any Key OK!!」のタイトル曲まで、バラエティーあふれるイルカソングが勢ぞろいなんです。
シングル・バーションにこだわったりしているのもとても素晴らしいと思いますね。もちろん、ジャケットのシンプルなノエルも。
ああ、久々に「夢の人」とか「植物誌」を聴きたくなってきた。
イルカって、あのやさしいキャラクターだし、慈愛に満ちているので、ライブも素晴らしいんですよね。「イルカ ライブ」「あしたの君へ」を聴けば絶対うなずけるハズです。
イルカの音楽って、一見、陸奥A子のコミックスみたいにのんびりほんわか、性善説のメルヘンなんだけど、根底には現実を見据えた力強い瞳がある。そういうのって今の時代にこそ必要ですよね。
気づかない人たちには笑われてしまうかもしれないけど、イルカの歌う、人間いや生き物である限り持ってる良心みたいな音楽をワタシはやっぱり大切にしたい。
ある意味、日本じゅうもうどこに住んでても同じになってしまって、モノより心とか言いながらそれでもいろいろ欲しがって、いろんな我慢がどんどんできなくなって、人より損はしたくないという理由で自己中心的で保身に走って、仲良く見えたって心の扉をピシャリと閉じてる関係が多くなってるように切実に感じるけど、それでも、やっぱり信じていたい。
あのトレーナーにオーバーオールのイルカが、ギター抱えてニカッっと笑って、歌ってくれている限り。
(2006.5.14)