いよいよ完結へ!? 南沙織アルバム復刻
ついに残り2枚となりました。オーダーメードファクトリーで、着々と進んできたシンシアのオリジナル・アルバム復刻。
フィナーレを飾るのは、引退となりました78年の「 I've been mellow 」と「 Simplicity 」です。
まずは、資生堂春のキャンペーンソングになってスマッシュヒットした「春の予感-I've been mellow-」を含む「I've been mellow/SAORI」。
タイトルやジャケット通り、メロウになったシンシア。歌い方のクセがひどくなっているし、まんま新しい世界とまでは行きませんが、尾崎亜美、松任谷由実、NOVAらニューミュージック勢を中心に、PLで特大ヒットメーカーとなった都倉俊一らの作家陣を起用。
なるほど78年の旬らしい仕上がりとなっています。
と言いつつ、手法はそのままの感じも。都倉関係なのか、酒井さんの趣味なのか狩人のカバー「引き潮」が入っているあたり、「早春のハーモニー」や「20才」なんかの筒美作品集を彷彿とさせますよね。
個人的には、ユーミンの詩の“金持ちぶって”というフレーズにドキリとしたものです。コレ、皮肉屋ユーミンの、ワリとお金に執着してたシンシアに対するイヤミと解釈するのが正しいでしょうか…。
驚くのはこの真っ黄色のジャケ。前髪をさらに切ってファッショナブルに変身したものの、ファンデーションがテカってたり、どことなく落ち着かなげであります。
そして涙のラスト・アルバム「Simplicity」。
引退宣言からさよならコンサートまで3ヵ月間しかなかったこともあって、制作に時間がなかったようですが、それがかえってよかったのか、オリジナル&洋楽カバーという、これぞ南沙織のLPという構成になっています。
A面は有馬×筒美の名コンビで有終の美を飾るのですが、やはり有馬先生の詩がスゴい。先生は当時はもう旬を過ぎ、発注も少なくなってたみたいで、往時のきらめきほどは輝いてないのですけれど、混沌とした最期のシンシアそのものを表現しているようで感慨深い。
やはり南沙織という個性を構築してきたのは、ほかならぬ有馬三恵子だったと再確認できるでしょう。
現役中ラストシングルにしてデビューシングルのアンサーソング「Ms.(ミズ)」はもちろん、支流の優雅を本流が焼き直した「私の港」、強い意志の別れに胸を打たれる「さよならにかえて」などなど、涙なしには聴けない感じ。
中でも半ば伝説的になっておりますが「シンプル・シティー」の哲学性には、南沙織の歌手としての存在意義が詰まっております。
なおアルバムタイトルと違うのは狙ったのではなく、金塚さん(酒井さんと一緒に百恵ちゃんもやってた女性AD)が、シンシアの発音を聞きまちがえて曲を発注したからだとか。
B面は、引退記念シングルとなるデビッド・ゲイツの「グッバイガール」や、オリビア・ニュートン=ジョン、マイケル・フランクス、アメリカ、バリー・マニロウらのAORをクセと情感たっぷりに歌ってます。
というこの2作品。現状から鑑みてまず復刻されるとは思うのですけど、念のため、そしてこれにて終結ということで紹介させていただきました。
厳密に言えば、あと74年の「ヒット全曲集」が…。このLPはSQ-4ch仕様盤のためか、「純潔」「哀愁のページ」「早春の港」「傷つく世代」「色づく街」が新録音されてて、その他の曲にも極端なリミックスが施されている…。
CD化されれば、既発売の音源はすべて復刻ということになるでしょう。
(2005.2.8)