クリーニング屋マサちゃん、梓兄貴(?!)を洗う?
ソニーの酒井政利さんと言えば、落ち目の歌手を復活させるクリーニング屋さんとしておなじみ。
雪会姐さんを筆頭に、坂本スミ子や金井克子、内田あかり、ジュディ・オングなどなど、まるで仕立て直したかのような実績は枚挙にいとまがありません。
特にジュディの成功は大きかったようで、79年の「魅せられて」の大ヒット以降は歌手自らが声をかけてきたり、いきなり移籍話を切り出すなど、いろんなアプローチがひっきりなしだったとか。
その中の1人だったのが、ルミ子の歌う“林さんのおねえさん”こと梓さん。ワタシは芳村真理の「みちよちゃん」という呼び方が好きなんですけどね。
それはさておき、梓さんの場合は「メランコリー」で一度イメチェンに成功してるせいか、最初は酒井さんもそんなに手はかけず、筒美先生に委ねてしまった感があります。
日本たばこの新製品・パートナーのCMソングとなった第1弾「よろしかったら」からして、大人のポップスここにあり、という洒落た曲に仕上がってますね。
ワタシが勘ぐるのは、この直後、ちあきなおみをやろうとしてトラブルになり、その影響で黛ジュンがトーンダウンしてしまったという事実。いい作品は残しつつも、酒井さん、ミョーにしみ抜きが下手になったよーな感じだったんですよね。
百恵ちゃんの引退と重なった時だったし、ズバリ大殺界だったのかもしれません。
で、梓さん。大塚博堂をやったり、どんどんマイナーな方向に。
シャンソン風はピッタリはまって素敵ですが、「ナラタージュ」なんか、素晴らしいけど怖い、怖すぎる…。もちろん、そこが醍醐味でもありますがね。
あとワタシがちょっと許せないのは「小心者」です。コレ前にも書きましたけど、中村泰士さんが桜田淳子のために書いた曲。それを横取りしてしまうんですね、酒井さん。
「この曲、淳子さんには歌いこなせません」とかなんとか言ったかどーかは知りませんが(でもいかにも言いそうでしょ?)。淳子の歌で聴きたかったな。
とまあ、解説になっておりませんけど、この待望の2枚組ベスト「 ゴールデン☆ベスト 梓みちよ ニュー・シャンソン 」には、ソニー時代の筒美京平全作品とシングルA面、アルバムに入らなかったB面を収録。
さらにアバ、シカゴらのカバー曲も入ってます。真理ちゃんでおなじみのあの「ニコラ」も。
これで買い逃す法はないってもんでしょう。
と言いつつ、ズズ&トノバンが丹誠込めた好盤「夜会服で…」「耳飾り」の曲が皆無に等しいのは無念ですけどね。「真珠をつけた根無し草」とか「銀色の仮面をつけて踊ったクリスマス・イブ」とか「愛をちらかしていた」とか…タイトルだけでも素敵でしょ。
98年には1枚ものの「GOLDEN J-POP/THE BEST 梓みちよ」も出ていますが、今回のベストには「おいでお嬢さん」以外は全部収録されてますから、ゼッタイこっちがオススメ。
でも、いきなり梓兄貴(?!)の世界は…という人は「DREAM PRICE 1000 梓みちよ/よろしかったら」でお試しを。キング時代のはあまり興味がないのでスミマセン。なお、近々セルフカバーのアルバムも出るそうですよ。
クリーニング屋マサちゃん、梓さんちに御用聞きに来たはいいが、趣味の話に夢中で長居しちゃって、肝心のお仕事を忘れたみたい。そんな感じのする、かなりマニアックなプロデュースを存分にお楽しみください。
(2005.2.5)