時代を創った作詞家、40年の俯瞰図!
夢は砕けて夢と知り、愛は破れて愛と知り、時は流れて時と知り、友は別れて友と知り…(阿久悠/古城の月 人間万葉歌ー序文より)。
阿久センセイの作詞家としてのスタートは1965年5月10日発売のザ・スパイダース「モンキー・ダンス」(「フリフリ」のB面)。ということで、2005年はちょうど40周年にあたるそうで、記念のリリースとなりました。
この5枚組、全108曲を収録したボックス「 人間万葉歌~阿久悠作詞集 」。
集大成ボックスセットとアナウンスされておりますが、それは97年に出た14枚組の「 移りゆく時代 唇に詩~阿久悠 大全集~ 」の方だと思います。こちらはダイジェスト版、というか阿久さんの私家版といった趣です。
と申しますのも、それぞれのディスクはカテゴリー別となっておりまして、1枚目は小林旭の「熱き心に」に始まり、都はるみ、五木ひろし、ちあき、八代亜紀、チータまでを収録した演歌系の「愛と哀しみの旅路」。
2枚目はピンク・レディーの一連のミリオンヒット9曲をはじめ、森昌子、桜田淳子、伊藤咲子、岩崎宏美、新沼謙治、石野真子らスタ誕組を中心にした「スタア誕生」。
3枚目はジュリーやヒデキ、ひろみ、フィンガー5、アコにピンポンパンやヤマトなど、エンターテインメントを追求した「ショウほど素敵な商売はない」。
4枚目はキーヨから始まって、ペドロ&カプリシャス、大橋純子、チェリッシュ、トップギャラン、マチャアキ、ゴローなど、ちょっとアダルトなポップスで構成した「青春の光と影」。
そして5枚目は、センセイ自身が思い入れ深い作品を選んだ特別ボーナスCD「人間万葉歌 1965~2005」で、ご自身の著書「なぜか売れなかったが愛しい歌」で紹介した作品が中心となっております。
こうして見ると、今回のボックスは40年の軌跡を追った編集ではなく、コピーライターや構成作家から作詞家に転身した阿久センセイの手法というか技法というか、そんな手腕を俯瞰的に堪能できるセレクションと言えるのではないでしょうか。
各ディスクに散らばったレコード大賞受賞曲だけを聞いても、その幅の広さに脱帽するばかりです。
センセイは時代を読んでいったのか、時代を創ってきたのか、ワタシなんかが推測できない作品ばかりなんですけど、年表や阿久さんの最近の反省の弁などから鑑みると、やっぱ、時代を創ってきたとみるでしょうね。
歌謡曲というものを、世相を反映するものではなく、世相を牽引するレベルに高めていったのは、他ならぬ阿久さんだということが、この時代を知らない人にも理解できるような気がします。
年代順ではないのに、そこまでが感じられるアンソロジー…やはり、阿久センセイの言葉の力はただ者ではなかったということを思い知らされます。
そのへん、推薦文がテリー伊藤というのに象徴されてるのではないかと思っています。
ワタシ的には音源所持している曲ばかりなので、やはり解説書が楽しみ。
ご本人のインタビュー&収録曲解説はもちろん、確かスポニチ記者を経て音楽評論家になった小西良太郎さんの「阿久悠体験記」など、読み応えありそうですもん。
ワタシが持ち続けている阿久センセイのイメージは、やはりスタ誕で、辛口批評をしていたいけな少女をいたぶっていた姿。
審査員席で威圧感を漂わせていたあのオジさんを思い出しながら…阿久センセイの、「詩」ではない「詞」の数々を、黙読し、音読し、そして歌ってみましょう、改めて。
(2005.5.24)