天才!流行歌を賛美歌に変えた愛唱歌集
何をやらせても秀でている由紀さん。
NHK朝の連続TV小説「ファイト」では、温泉宿のおかみさん駒田絹子役を好演。女優としてだけでなく、劇中で歌う歌も大評判と、歌手・由紀さおりの存在感と力量を示していることはご存じのことでしょう。
で、この「 ファイト 由紀さおり~絹子の愛唱歌~ 」は劇中で歌った歌を集めた、久々のソロ新録音アルバムで旧譜ではないのですが、選曲と歌が余りにもスバラシイのでピックアップすることにいたしました。
CDは劇中で登場する競走馬に捧げるオリジナル「サイゴウジョンコ応援歌」ではじまるのですが、2曲目からは古今東西、時代もジャンルも超えた名曲集を歌うという構成。いわばサウンド・トラックなのです。
チョイスされたのは大津美子の「ここに幸あり」から、吉永小百合の「寒い朝」といった慎ましやかな昭和歌謡、ちあきも歌った「星影の小径」、岸洋子の「夜明けのうた」、「見上げてごらん夜の星を」、お嬢の「川の流れのように」「愛燦々」、喜納さんの「花」、コーチャンの「愛の讃歌」などなど。
しかし、どれもが名人芸ですね。特に由紀さんは必要最小限で最大限に表現することが天才的です。
イルカの「なごり雪」、赤い鳥の「翼をください」、中村雅俊の「ふれあい」などのフォークもよいのですが、ワタシが愛してやまないのは、「埴生の宿」やアイルランド民謡の「春の日の花と輝く」、ロシア民謡「赤いサラファン」といった古き良き愛唱歌の数々。
かつて日本に美しい精神と言葉があふれていた頃の訳詞の、崇高で慈愛に満ちていることよ。 口ずさむだけで心が洗われる響きがありますけど、由紀さんの歌はまるで天使の如く清らかで賛美歌のようです。
選曲については、ドラマの内容とリンクされているケースが多いですが、由紀さんによると「どの世代が聴いてもきちんと心にとどくような歌であることを重要視した」とか。
「どれも人の心に訴える力があるので、これまで歌い継がれてきたし、今後もずっと残っていく歌だと思っています」のひとことは、ワタシたち「うた」をこよなく愛する人間にとって、福音の言葉だと思います。
なお、ジャケットイラストはドラマと同じく我らがサイバラ。そんなこともあって、ワタシは迷わず予約しました。
(2005.8.31)