“歴史的名盤”がレコードの日にアナログ復活!
今年の3月11日、76歳でお亡くなりになったいしだあゆみさん。
近年は世俗から離れてお暮らしになっていた印象がありますが、テレビで時折見かけるお姿からは、昔と変わらぬ上品なおきゃんさやセンスの良さが伺えていただけに突然の訃報にショックを受けたことでしたが、その喪失感はあゆみさんが遺した映像や音楽に触れるに付け大きくなってゆくような気がしています。
現在、BS-TBSで放送中の「金曜日の妻たちへIII・恋におちて」など、女優として脂の乗りきった頃のあゆみさんをしみじみと拝見しておりましたら、自然と歌手として脂の乗りきった頃の歌も聴きたくなってしまうのですが、そんな折りにプレーヤーにかけるのが、歌手としては全盛期を過ぎ、演技派女優へとシフトしていくさなかの1977年にリリースされた1枚。そう、“歴史的名盤”として名高い「アワー・コネクション」です。
当時はヒットしなかったものの、ティン・パン・アレイや達郎の参加作品として80年代後半から再評価が高く、今日に至るまで、CDでもLPでも再発を繰り返してきたこのアルバム。言わずと知れた傑作ではありますが、ちょうど今年の「レコードの日 2025」に、アナログ盤「
歌手としては少女時代にビクターからデビュー済みだったあゆみさんですが、ヒットシンガーとなったのは68年、20才になってコロムビアに移籍してから。橋本淳+筒美京平コンビによる移籍第3弾「ブルー・ライト・ヨコハマ」の特大ヒットでスター歌手の仲間入りを果たしますが、70年代が進むに連れ、他の歌謡曲歌手と同様、フォークやアイドルなどのヤングブームに押されていきます。
歌手としては自信がなく消極的だったという彼女は、女優に活路を見出すのですが、そんな中、演技で開花した表現力を歌の方にも…という感じで企画されたのがこのアルバムだったのだそうです。
プロデュースは全曲を作詞した橋本淳さんで、作曲・アレンジは細野晴臣さんと萩田光雄さん。バッキングに細野さん、鈴木茂さん、林立夫さんというティン・パン・アレイのメンバー3人に加え、矢野顕子さん、吉田美奈子さん、山下達郎さんら錚々たる顔ぶれが参加したことでも分かるように、ニューミュージックよりも進んだ、今で言うシティポップを展開しています。
あゆみさんのボーカルも実験的なサウンドに引っ張られるように、それまでの小唄的な和モノっぽい節回しから、ぐっとメロウにシフト。“翔んでる女”をイメージしたであろう淳さんの詞世界とディレクションによって、都会のいい女が歌うように語る、語るように歌う、なんとも言えない哀愁味のある歌声を聴かせています。
当時は全12曲の中から、達郎&美奈子のコーラスが印象的な「ダンシング」がフィーチャーされ、プロモーションシングル「ダンシング/ひとり旅」としてリカット。テレビの歌番組でも歌われ、「六本木ララバイ」とのカップリングで正式にシングルカットされる予定があったそうですが、結局は立ち消えに…。
それには、このアルバムと同月発売で出た橋本+筒美コンビによるシングル(「ちょっと淋しい春ですね/夢のかけら」)が従来のファン向けといえるモロ歌謡曲でしたので、アルバムだけの企画となってしまったことも関係したのでしょうが、この路線をもっと前面に出していけば、翌年イメチェンが成功した伊東ゆかりさんのように若いファンも増え、あゆみさん自身の歌手としてのモチベーションも上がっていたのかもしれません。
結局は9回連続出場していた紅白歌合戦もこの年でいったん最後となり、歌手活動がより消極的になってしまいましたから、残念な限りです。
なお、近年もヴァイナルブームによって一層再評価が高まり、2015年には「私自身/ひとり旅」がアナログシングルとして発売。22年には「私自身/バイ・バイ・ジェット」がカラーレコードとしてシングル発売されるなど、長年にわたり“ジャパニーズ・シティポップ屈指の名盤”として人気を博し続けているアルバム。
参加ミュージシャンを抜きにしても傑作には違いありませんし、あゆみさん自身、筒美アルバムの名盤「ファンタジー」と並び大切にしていたそうですから、これからも多くの人が聴き継いでいくことが何よりのご供養になる気がします。
アナログは…という人は、13年版のCD「
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旧・復刻盤53(#268)以前
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