ナツメロ喫茶店

 こころに残るあのうたを、力をくれるそのうたを、ちょこっと綴っておきました。

#66
四季絵巻/太田裕美
(作詩・松本隆/作曲・ 筒美京平/編曲・萩田光雄 EP「恋人たちの100の偽り」1977)

このうたに、どれほど慰められてきたことでしょう。
 

 悩みに暮れたときも、行く先を見失ったときも、
そしてまた、誰かを傷つけてひどく悔やんだときも。

 

めぐりゆく季節をたどり、歩き続ける日々の中で、
もう40年近くもの間、
このうたはいつもそばにい続けてくれています。

 

それはまるで、生きていく真理が綴られた福音書のよう。

 

心のひびわれに優しくしみ入り、たちまち傷を癒してくれるのです。
暗闇を照らすひとすじの光のように、行く手をそっと示してくれるのです。
そしてまた、前に向かって歩ける力を与えてくれるのです。

 

詩とメロディー、サウンド、そして歌声が奇跡のように一体となって
喜怒哀楽と、それにまつわるすべてを包み込み、昇華するうた。

 

声をつぶした太田さんには、往時のきらめきはないけれど、
輝きを失ったのと引きかえに、より深まったまごころが伝わります。

 

こわれもののような心を、そっと胸に抱えて生きる人のもとにだけ、
どこまでもまっすぐ届くように。

 

 

 

「つらい日々に泣いた記憶さえ
 今はうつくしい夢の絵巻」

 

 

 

 

 
(2015.6.25)
 

note:EP「恋人たちの100の偽り」1977.12.21
有線ではナンバー1に輝く地区も続出した大ヒット「九月の雨」の次作としてリリースされたシングル。両面ともオリジナル・アルバムには未収録のナンバーで、「四季絵巻」はカーペンターズの「ふたりのラブ・ソング」を下敷きにしたイメージ。ポップなサウンドの中にもノスタルジーを感じるメロディーで、まさに絵巻のごとく美しい情景が浮かんできます。「九月の雨」のロングヒットが裏目に出たのと、太田さんの声が不調だったためか、オリコン最高27位という結果に終わっていますが、もっと日の目を浴びるべき名曲です。

◎いまCDで聴くなら… 太田裕美 Singles1974~1978