ナツメロ喫茶店/うたノートvol.61


ナツメロ喫茶店

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  こころに残るあのうたを、力をくれるそのうたを、ちょこっと綴っておきました。

vol.61

時 -forever for ever- /本田美奈子.

(作詩・岩谷時子/作曲、編曲・井上鑑 CD「時」2004)




岩谷時子さん。

昭和を代表する作詞家の一人ですが、
私たちの世代ですと、初めて触れたのが「恋の季節」で、
最もよく聴いたのが郷ひろみの初期のヒット曲、
という人が多いのではないでしょうか。


「男の子女の子」「小さな体験」「愛への出発」「魅力のマーチ」
「モナリザの秘密」「花とみつばち」「君は特別」…

小さなプレーヤーで繰り返し聴き、諳んじたレコードには、
決まって“岩谷時子”という名前が記されていましたが、
ある日そのお姿をテレビで拝見して、
たいそう驚いたことをはっきりと覚えています。

ひろみが歌う、あの楽しくて格好のよい、素敵なうたたち。
その詩を書いた女の人が、まだ幼い目には
学校の先生のように見えたのですから。
それも、特に厳しくて、みんなから怖がられている
先生のように映ったのですから。


以来、岩谷さんのつくったうたを聴く時は、
国語の授業みたいに詩を読み込もうとしたり
あるいは道徳の時間のように
襟を正される思いでいたりしていました。

それでも、凛とした空気が感じられるのに、とても温かく、
いかにも自分好みと思えるうたを並べてみると、
不思議と岩谷さんのものばかりで、また驚いたことでした。


「君をのせて」「矢車草」「夾竹桃は赤い花」
「遠くからみちびいて」「小さな船乗り」「ラブレター」…

何度聴いても新鮮で、そのたびに胸を打たれるうたは
本当に数えきれないほどですが、
最後に感謝を込めて、しみじみと噛みしめるのならば
やはりこのうたでしょうか。


厳しくて、寂しくて、優しくて、希望に満ちて。
岩谷さんが私たちに紡いでくれたうたたちは、
男と女の子の絆に見えて、
実は大自然と人間とのそれをうたった、
永遠の愛の讃歌だったのかもしれません。




「はるかな空と 広い海の
 はざまを行く あなた
 その名は 時でしょう

 終わる日もない 孤独な旅
 私たちをのせて 宇宙をただようのね

 勇気を出して この時代を
 優しさと愛で のり越えて行くのよ
 正しい力を合わせて 生きよう
 いのちに終わりがある 私たち」




岩谷時子さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

(2013.10.28)

note:CD「時」2004.11.25発売
岩谷先生が最後に目をかけたアーティスト、そう言っても過言ではない本田美奈子.さん。クラシック転向後としては2枚目ながら、彼女にとって最後となってしまったオリジナルアルバムのために、岩谷先生が書き下ろしたタイトル曲です。
岩谷先生の作詞家としての集大成と思えるような名曲ですが、宝塚時代から岩谷先生と二人三脚で歩んできた越路吹雪さんを手がけた東芝EMIの名プロデューサー・渋谷森久さんの命日にリリースされたといいますから、音楽の神様に愛され、使命を負った人たちの折り重なるような因縁を感じます。ちなみにアルバムは美奈子.さんの逝去後、オリコン最高39位まで上昇。高い評価を受けました。

◎いまCDで聴くなら…


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