アッコちゃんらを発掘した伝説のP、集大成BOX
キングレコードのベルウッドといえば、はっぴいえんどとそのメンバーだった大瀧詠一や細野晴臣という御大諸氏、ムーンライダーズの前身ともいえるはちみつぱい、あがた森魚らを擁し、今日不滅の名盤と評されるレコードを多数発表したレーベル。
今日聴いても普遍的な味わいを持つのは、当時はメインストリームじゃなかった分さほど消費されなかったゆえんともいえそうですが、日本のフォーク・ロックの中でも特異な才能を持つ人たちが集まったレーベルであることに違いありません。
そんなベルウッド・レコードが創立40周年ということで、このレーベルを立ち上げたプロデューサー・三浦光紀さんによるリイシュー企画が目白押し。さらに、三浦さんのお仕事をまとめた4枚組BOX「 三浦光紀の仕事 」がリリースされることになったそうです。
キングレコード時代に、上條恒彦と六文銭の「出発の歌」をヒットさせた三浦さんは「新しい日本語のフォークとロック」を作ろうと考えた人物。それは見事80年代に開花し、今日までずっと継承されていくわけですが、よく考えるとYMOもナイアガラも、松本隆さんが詩を手がけた名曲の数々も、氏がいなければ存在しなかったのかもしれません。
まさに、日本のポップスとロックの礎を創ったプロデューサーといえますが、今回のBOXはご自身の監修による4枚組。2枚は三浦さんの選曲で、もう1枚がずっと仕事を共にしてきたエンジニア・吉野金次さんによるセレクト。そして最後の1枚が、三浦さんに発掘されたアーティストの1人、矢野顕子さんがカバーしたベルウッド・ソング集という構成になっています。
ワタシの場合、三浦さんのお名前を意識したのはアッコちゃんからですので、どうしてもその目線になりますが、リアルタイムの印象としては80年代初頭、「ごはんができたよ」を出したジャパンレコードのエライ人というイメージが最も強い感じです。
三浦さんはベルウッドからフォノグラムへと移籍し、アッコちゃんをデビューさせるワケですが、アッコちゃん自身、昔から「まだ誰も矢野顕子を知らない時、才能を認めて引っ張ってってくれた人」と公言されていますし、ファンの間ではアッコちゃんの要望を何でも聞いてくれた(実際はファーストアルバム「JAPANESE GIRL」のレコーディング中に毎日お寿司の上を取ってくれた)プロデューサーとしてもおなじみなんですよね。
ということもあり、アッコちゃんファンにもぜひオススメしたい内容なのですが、それはディスク1を見るだけでもおわかりいただけるでしょう。はっぴいえんどの「風をあつめて」「 夏なんです」「無風状態」「相合傘」、ホソノさんの「恋は桃色」「終りの季節」、はちみつぱいの「塀の上で」、あがた森魚さんの「大寒町」「リラのホテル」…どれもこれも、アッコちゃんのレパートリーばかり。
これに呼応するように、矢野顕子カバー集のディスク4には「風をあつめて」「無風状態」「恋は桃色」「終りの季節」「大寒町」などがずらり。
さらにライブ音源ですが、湯布院ライブより「雨が空から降れば」、札幌・キタラホールでの「リラのホテル」といった貴重音源も収録されるようです。
ワタシもそうですが、古くからのアッコちゃんファンにはカバー元をたどるうち、ベルウッドを聴くようになった人も多いでしょう。なお、ベルウッドではありませんがファーストの「気球に乗って」、草創期の「大いなる椎の木」、大名曲「ひとつだけ」もセレクトされていますし、吉野金次さんセレクトのディスク3には、ファーストの「へこりぷたあ」、ライブにして三橋美智也のカバー「達者でナ」、これまた豪華メンバーのライブから「東京は夜の7時」が収められています。
むろん小室等さん、高田渡さん、中川五郎さん、加川良さん、喜納昌吉さん、西岡恭蔵さんらの楽曲も多数収録されていますので、ベルウッドの歴史をコレクションしておくのにうってつけのBOXといえるでしょう。しかもリーズナブルなプライスですからね。
矢吹申彦さん書き下ろしジャケットも素敵ですが、楽しみなのが全108 ページという別冊ブック。
歌詞のほか、小川真一さんによる解説のほか、小室等さんや吉野金次さんのインタビュー、さらに15 歳の時以来交流を続けているという経済評論家であり作家の佐高信氏の「52 年来の友、三浦光紀」などが掲載されているといいますから、鑑賞の一助になるのはもとより、楽曲の裏側をのぞいた気分になったり、また違う解釈の幅を広げることにもつながる気がします。
あ、アッコちゃんのモノマネを通じ、きっと清水ミチコさんもレパートリーにしていると思いますから、ミッチャンのファンの方や今年のさとがえるに行かれる方にもぜひオススメします。
(2012.10.22)