圧巻！ ワーナーの70～80年代女性アイドル史！
しかし、一昨年あたりからはこれまでの分を取り返すように怒濤のリリースが続いています。そう、浅香唯からグレープ＆さだまさし、小柳ルミ子、朱里エイコ、西島三重子、そしてアグネス・チャン、明菜、森高まで、各時代でレーベルを代表してきたアーティストたちのBOXや新ベストが続々と企画されているのです。
これに触発され、ビッグネーム以外を求めるマニアの皆さんの期待もかなり高まっているようですが、ついに歴代所属アイドルをゴソッと集めたコンピ盤が登場します。
それも2枚組2タイトル、70年代編の「 きらめきアイドル ~ ワーナー70'sコレクション(仮)
」、80年代編の「
ときめきアイドル ~ ワーナー80'sコレクション(仮)
」です！2000年に入ってからも「おしえてアイドル」シリーズはありましたが、メーカー純正品としては、97年の70's Smileシリーズ、すなわちルミ子、栗田ひろみ、アグネス（チャン＆ラム）、藍美代子、讃岐裕子らが紙ジャケ復刻した時の一環で出た「smile special edition」以来15年ぶりではないでしょうか？
しかも今回は、ワーナーのアイドルの歴史が詰まっているといっても過言ではない内容になりそうで期待大です。
ひもとけば、現ワーナーミュージック・ジャパンが設立されたのは、外国企業による資本自由化が進んだ1970年。一足先に発足したCBSとソニーによるCBS・ソニーレコードのように、アメリカのワーナー・ブラザーズと日本のパイオニア、渡辺プロダクションという3社による合弁会社、ワーナーブラザーズ・パイオニア（おなじみのワーナー・パイオニアになったのは72年から）として誕生したのです。
第1回新譜が発売されたのは71年からということで、70代編には、71年2月新譜だったという范文雀の「あなたが憎めない／最後の一時間」を皮切りに初期の歴史がそろい踏みになる模様です。
昭和でいえば46年、女性が歌う流行歌といえば艶っぽい大人のための歌謡曲がほとんどで、辛うじて若向けというとＧＳの向こうを張ったビート歌謡の名残りがあった時代。70年代アイドルポップスがアーティストもファンも等身大であることを前提とするならば、71年の初頭はまだ前夜といえる頃ではなかったでしょうか。
その確立には新三人娘が出そろう後半まで待たねばならないわけですから、ティーンが等身大として自分を重ねられるという意味でのヤングアイドルは岡崎友紀や吉沢京子ら、歌も歌えるテレビドラマの若手女優がメインだったといえます。
そういう意味では、ワーナー初期もまさにその流れ。范文雀は「サインはV」のジュン・サンダースで人気を博し、このデビューシングルは主演ドラマ「打ちこめ！青春」の主題歌でしたし、ほかにも「おれは男だ！」でヨシカーくんのお姉さん役だった秋山ゆり、新東宝の子役出身だった川奈真弓（「サルビアの花」の競作が有名）ら、アイドルという言葉でくくるにはちょっと無理のある面々が名を連ねています。
しかもこのアイドル女優というジャンルは、頂点の岡崎友紀ですらトップ10ヒットがないことでも分かるように、人気度とレコードの売り上げは比例することなく…。ワーナー史においても同年「わたしの城下町」で歌手デビューし、いきなりミリオンヒットを記録した小柳ルミ子の陰に隠れてしまっていたので、今回、このあたりの流れがつまびらかになるのはかなり有意義なことだと言えるのではないでしょうか。
アイドル歌手、アイドルポップスというジャンルでワーナーで最初の成功者といえるのは、新三人娘が全盛を極めた72年デビューのアグネス・チャンですが、実はその前に、お姉さんのアイリーンがワーナーから日本デビューを飾っているのです。
かつてスターの登竜門だったいずみたく門下だったといいますが「恋の夜来香」「花占い」「薔薇の誓い」とシングルを発表するも不発に終わり、アグネスと入れ替わるようにして裏方へと回ったのでした。
シンシアとロージィーみたく「明星」や「平凡」などではアグネスとアイリーンの写真がよく載っていましたが、姉妹とは思えないほど正統派の美人でしたよネ。
なお、ワーナーの姉妹アイドルといえば、木の実ナナの妹として話題をさらった木の実まこもいて、今回は彼女のシングル「あこがれ／好奇心」も収録されるようです。
そして花の中3トリオもそろい、空前のティーンアイドルブームに沸いた73年、話題をさらったフォトジェニックアイドルといえば栗田ひろみ。仲良しの浅田美代子が唯一自分より音痴な歌手としてよくその名を挙げていますが、レコードなのに音が狂っているデビュー曲「太陽のくちづけ」を聴けば納得でしょう。第2弾「初恋の散歩道」を経て、第3弾「愛の奏鳴曲（ソナタ）」ではセリフが中心の女優歌となりました。
ガールズグループということでは、キャンディーズに対抗し、ヤマハが生んだアイドル3人組ピーマンもワーナー。サーカスの叶正子や景山美紀が在籍したグループですが、アイドルファンならばデビュー曲「恋のライバル３対１」や第2弾「ラブ・タッチ」は知らなくとも「部屋を出て下さい」だけは知っているはず。同じくヤマハ出身、ピンク・レディーのスタ誕応募曲だからですが、たぶんポプコン系BOX以外では初の収録になるんじゃないでしょうか。
あと、関西のキャンディーズというか、ちょっとバッタもんムードもあったラブ・ウィンクスもワーナーでしたが、Hotwaxからまさかのシングルコレクションが発売済みです。
75年デビュー、アグネスと柏原よしえの間で「ハロー・グッバイ」を歌った讃岐裕子はOMFで完全版が復刻されていますのでよしとして、マニア待望といえるのが76年度日本レコード大賞新人賞を受賞した芦川よしみ。ルミちゃん路線といいますか、演歌寄りの歌謡曲ではありますが、カックラキン大放送！や鶴光のオールナイトのアシスタントでもおなじみだった人だけに、デビュー曲「花火」や意味深な「燃える春です」を待ちわびていた人は多いのではないでしょうか。
そして70年代最後の79年のワーナーを飾るのが、TBSドラマ「ムー一族」の郷ひろみの恋人役募集で優勝した桂木文。浅田美代子、谷口世津ラインのウィスパー劇中歌にしてさだまさし作品「短編小説」や、第2弾「目覚めの午後」もいいですが、シンシアファンとして必聴は南沙織のアルバム「早春のハーモニー」収録曲の「冬物語」のカバーです。
という70年代のワーナーですが、個人的には78年に渡辺プロが資本撤退し、新たなレコード会社SMSを創設してからはヒイキのアーティストがいなくなり、なじみが薄くなってしまった感があります。
でも、今ワーナーのレコードを思い出すと、草色のものから、赤地や青地にワーナー・ブラザーズやパイオニアをはじめ、リプリーズ、エレクトラ、アサイラム、アトランティックなどのロゴをちりばめたのものまで、シングルの袋にもとっても愛着があるんですよね。
本場と同じなので当たり前ですが、レーベル面のお洒落さも群を抜いていましたし、アグネスが出るたびに買っていた73年から78年あたりまでのパームツリーのレーベル（ワーナー・ブラザーズ）は今もキュンとなるほど懐かしかったりします。ルミちゃんならR、アグネスならWとか、レーベルを示す型番の末尾もいとおしい…。
ある意味ワーナー・パイオニアの社史ともいえるこのコンピ、コレを聴いたらワーナーのレコードとともに過ごした日々までもよみがえってきそうです。
なお、80年代のワーナーは明菜一色という印象ですが、80年代編には、荻野目ちゃんや大森絹子がいた80年のMILKから始まって、グラドルとなった横須賀昌美、貝殻ばかり語られますがモデルからマッチの相手役で芸能界デビューした武田久美子、スタ誕出身の女子大生成アイドルからキャスターになった吹田明日香、わらべの倉沢淳美、子役から大成し緒形直人夫人となった仙道敦子、お湯をかける少女からハリウッド女優に大成した工藤夕貴、ミス・マガジンの加藤香子、もっと売れても良かった橋本美加子、相原勇の小原靖子、羽生善治夫人となった畠田理恵、未完の大器・佐倉しおり、全日本国民的美少女・藤谷美紀、キョンキョン似だった89年の星野由妃までがズラリと収録されるようですよ。
（2012.7.2）
＊収録曲は下記の通りです。
○Disc1：あなたが憎めない（范 文雀）／最後の一時間（范 文雀）／旅のはがき（秋山ゆり）／別れのページ（秋山ゆり）／島ごころ（川奈真弓）／わたし甘えちゃう（川奈真弓）／恋の夜来香（アイリーン）／花占い（アイリーン）／薔薇の誓い（アイリーン）／カナダの夜明け（市川瑛子）／夜明けの横浜（市川瑛子）／小麦色の少年（原美登利）／初恋の町（原美登利）／太陽のくちづけ（栗田ひろみ）／初恋の散歩道（栗田ひろみ）／愛の奏鳴曲（ソナタ）（栗田ひろみ）／ミカンが実る頃（藍 美代子）／若草の誓い（藍 美代子）／あこがれ （木の実まこ）／好奇心 （木の実まこ）
○Disc2：恋のライバル3対1（ピーマン）／ラブ・タッチ（ピーマン）／部屋を出て下さい（ピーマン）／ある晴れた日に（讃岐裕子）／ハロー・グッバイ（讃岐裕子）／シャインの秋（讃岐裕子）／愛の鼓動（浅野真弓）／ときめき（浅野真弓）／恋の誕生日（野中小百合）／ふたりの竹とんぼ（野中小百合）／火遊び志願（野中小百合）／ブルーエンジェル （青い天使）（アップルズ）／恋はミステリー（アップルズ）／花火（芦川よしみ）／燃える春です（芦川よしみ）／アダムとイヴ（ラブ・ウィンクス）／恋のコマンド（ラブ・ウィンクス）／短篇小説（桂木 文）／目覚めの午後（桂木 文）／冬物語（桂木 文）
