北ウイングから世界へ飛び立つ、明菜の旅うたベスト!
のっけから個人的な話で恐縮ですが、昔からいわゆるご当地ソングが大好きで、いろんな場所のことを歌ったうたを好んで聴いてきたワタシ。
しかし、子どもの頃は三半規管が弱く、ブランコでも酔ってしまうほど乗り物に弱かったがゆえ、トラベルミンジュニアを片時も手放せなかったり、つらい思い出も少なくないのですが、近場に出かけるのにも大変な思いをしていたからこそ、遠く離れた土地へのあこがれは余計に強かったのかもしれません。
そのせいか、大人になってからは旅に出た時には必ずその土地のうたを口ずさむことが習慣となり、帰り着いてからは封じ込めた思い出をたどるようにそのうたを聴き、もはやそれこそが旅の醍醐味と感じている節があったります。
そういう身の上ですから、国内はもちろん海外に行くときも、旅の道連れはやっぱりうた。たとえ知らない土地へのひとり旅であっても、耳になじんだ歌詞やメロディーがあれば、勇気百倍。また、気心知れた仲間たちと旅するときは、一緒に歌えば絆や思い出も余計に深まりますんで、絶対に欠かすことはできません。
であるからして、昔から旅うたを集めたカセットを作ってウォークマンで道々聴いたり、近年では旅うたコンピを道連れにすることも少なくないのですが、昨年からは松田聖子の旅うたで世界一周するという2枚組コンセプトベスト「NEW SEIKO エトランゼ」ならぬ「エトランゼ」(こちらで紹介)がお気に入り。飽きるほど聴いてきたうたばかりですが、確固としたコンセプトと練られた曲順のもとでは、とにかく新鮮で思いがけない発見もあったりして、昨年のフランス旅行にもお供してもらいましたっけ。
80年代はわれわれ庶民にとって海外旅行が特別なことではなくなっていった時代ですが、アイドルポップスというジャンルでも海外で録音したり、リゾートを中心に世界の名所をモチーフにしたうたが増えたり、国際的なうたが当たり前になっていったなあなどと感慨にふけったものでした。
ということもあって、他のアイドルでも聖子に続く旅うたベストが出ないものかしらんと思っていましたら、やってくれました! 聖子とくればやっぱり明菜! お株を取られちゃたまりません、なんたって「NEW AKINA エトランゼ」ですからね。
そう、黄金期のワーナー時代から明菜の旅うたを集めたコンセプトベストアルバム「 ドラマティック・エアポート -AKINA TRAVEL SELECTION-
収録曲はまだ確定していないようですが、ここはひとつ逃避行を気取って明菜とともにロンリー・ジャーニーをしてみましょうか。
成田に着くと、たとえ南だったとしても必ず「北ウイング」を口ずさんでしまうものですが、飛び立つ先はまずは「サザン・ウインド」「BON VOYAGE」「100℃バカンス」というリゾートアイランド。
といっても明菜の場合、やっぱりセンチメンタル。底抜けの南国気分にはならず、「トワイライト -夕暮れ便り-」のように一人旅の空から絵はがきを1枚ポストへ落とすという印象があるのですが、それもまた美しい旅の想い出。
明菜旅行はスケールの大きさも魅力で、早春のブラジル・リオデジャネイロ「ミ・アモーレ」、夏のサハラ砂漠「SAND BEIGE -砂漠へ-」に情熱のスペイン「最後のカルメン」、秋のパリ「モナムール(グラスに半分の黄昏)」と、南米、アフリカ、ヨーロッパをぐるり。それぞれ個性的な民族衣装も、自分のものにしてしまう明菜流着こなし術はさすがの一言。
他の追随を許さぬ無国籍な歌姫ぶりも素敵ですが、繊細で感受性が人一倍強い明菜だけに、精神世界の旅もあなどれません。
「目をとじて小旅行」でインナートリップは始まり、車のルーフから眺める星めぐり「メルヘン・ロケーション」、人波を漂う船出「BLUE ON PINK」、ハイになって宇宙へとイッちゃうエクスタシー「STAR PILOT」、ついには冥界をさまようジプシー「ジプシー・クイーン」…ラブが傷だらけになったとしても、わくらば色になったとしても、一途な明菜の心は夢はるか。きっと風と空の彼方へ、異次元の果てまで出かけたのでしょうか。
長い長い旅を終え「ドラマティック・エアボート -北ウイング Part II-」で帰国してからも、明菜の旅は続きます。成田エクスプレスは「ヨコハマ A・KU・MA」で横浜へ、そして明菜のいい日旅立ち。見覚えのある駅に着いたとしてもスパイラルな「感傷紀行」は終わることがないのです…。
と、妄想を頼りにただなぞっていくだけでも壮大でドラマチック。明菜の歌手としての才能をあらためて思い知らされるコトだと思います。それだけに、いまだ休業のままなのが残つくづく念な限りですが、あざやかな復活を信じて旧譜を聴きながら待ち続けたいと思います。
なお、このコンセプトベストとともに、オリジナル・アルバム14タイトル「 プロローグ<序幕> AKINA NAKAMORI FIRST<序幕> AKINA NAKAMORI FIRST
(2013.11.30)
*2012年に限定発売された紙ジャケット&ハイブリッド仕様の18タイトルも、今回限定再プレスされるとのことです。