あの「ザ・ベストテン」がCDでよみがえる!
ザ・ベストテン! あのタイトルコールと歓声入りの テーマ曲が耳にこびりついている人は今も多いはず。木曜よる9時の生放送、司会はもちろん黒柳徹子さんと久米宏さん。伝説のランキング番組「ザ・ベストテン」です。
昨年暮れ、スタッフのお一人だった山田修爾さん著「 ザ・ベストテン 」が発刊され話題となったのは記憶に新しいところですが、本のオビでも予告されていたレコードメーカー5社(ソニーミュージック、ユニバーサルミュージック、ビクター、ポニーキャニオン、コロムビア)によるコンピ盤シリーズがついに登場します。
資料をひも解きますと、番組がスタートしたのは1978年1月19日。固唾を飲んでガン見したあの晩のことは今もハッキリ覚えていますが、前夜祭番組を始め番宣もすごくて、イヤでも初回の放送は見なきゃ、なんて雰囲気でしたね。
当時はPLの大ファンで「UFO」の1位は当然という感じでうなずきましたが、あのカチャカチャした空港のボードみたいな発表方式には、見事にヤラレました。緊張と期待を増幅させる効果がありましたもんね。
クラスでもたちまち評判になって、翌日には次週のランク予想当てゲームなんかもやったりしたものです。冒頭に流れるランキングテロップを必死で覚えてCM中に今週の順位を予測したこともありましたが、あの集中力が勉強に回らなかったのが不思議…。
黒柳さんの意向もあったそうで公正に決められるランキングが売りでしたが、レコード売り上げや有線、ラジオの順位より、番組へのハガキリクエストの割合が高いことが特徴的だったんですよね。
よって、レコード売り上げはダントツ1位のPLがベッテンでは全然1位を取れないことに腹を立てたり、ハガキが重要だと聞いて、せっせと書いたりしたこともありましたっけ。
そういう意味では百恵ちゃん人気をあらためて実感した番組でもありました。「いい日 旅立ち」はともかく「しなやかに歌って」「謝肉祭」「ロックンロール・ウイドゥ」に至るまで、代表曲とは言えないナンバーまで軒並み1位を獲得しましたもんね。
1等賞に固執してたジュリーなど、歌手の皆さんがランキングに一喜一憂しているのを直に見たのもこの番組ならではでしたし、だからこそファンも頑張ったのだと思います。
個人的には、FCからの指令を忠実に守って太田裕美「南風」のリクエストを何十枚と書きましたけど、あれも太田さんの晴れ舞台を夢見てのこと。ベッテンにランクインしない歌手のファンはクラスでも肩身が狭い、みたいな風潮もありましたし。結局は最高14位という結果に終わり、悔しい思いをしましたけど…。
あと、中学の時にはマッチファンの子に頼まれて、授業中にコッソリ組織票ハガキの手伝いをしたこともあります。
そういえば、“追いかけます、お出かけならばどこまでも”とばかり中継を見に行ったこと(結局は人が多すぎて見られなかった…)や、出かけたコンサート会場から中継されたこともありましたっけ。
あ、ラストのハイ、ポーズ!の記念撮影の写真集(各都道府県の図書館に配布されたヤツ)を見に行ったこともありました。
と、ちょっと回想するだけでも次から次へ、いろんな思い出が走馬燈のようによみがえってくるザ・ベストテン。最高視聴率は41.9%まで上がったといいますから、ホント多くの人々の胸に刻まれてるはずですね。
肝心のコンピ盤の収録内容はと言いますと、やっぱりアラフォー向けというか、開始時の1978年から絶頂期の85年まで。そう、初代の男性司会者・久米さん在籍した年までにランクインした楽曲が年間ランキングをベースにチョイスされ、各年代別にコンパイルされる模様です。
ということですから、78年1月の1位、ピンク・レディーの「UFO」から85年12月の1位、小林明子の「恋におちて」まで、どれもおなじみの曲ばかりになりますが78〜79年の「 ザ・ベストテン 1978~1979 」はソニーミュージックから、80〜81年の「 ザ・ベストテン 1980-81 」はユニバーサルミュージック、82〜83年の「 ザ・ベストテン 1982~83 」はビクター、84〜85年の「 ザ・ベストテン 1984~85 」はポニーキャニオンからのリリ−スとなっています。
さらに演歌・歌謡曲編「 ザ・ベストテン 歌謡曲編(1978~85) 」がお家芸のコロムビアから。そうそう、ベストテンの功績としては、若い子が演歌も口ずさんだり、演歌歌手にも親しみを覚えるようになったという点も大きいですよね。
そして、名コーナーだった今週のスポットライト編「 ザ・ベストテン スポットライト編 」がソニーから併せて発売されるとのこと。
収録予定曲の中ではやっぱり太田裕美「ロンリィ・ピーポーII」。NYから帰国後初のシングルということでブッキングしていただいたのでしょうが、とにかくうれしかったですね。スタンディングドラムを叩いたあの映像は今もまぶたの裏に刻まれています。番組開始がもう半年早ければ、何週も登場したはずの太田さんですが、こういう形で、しかもこの曲がコンピ盤に入るなんてファンにとっては夢のようですね。
収録曲については、こちらをご覧の皆さんからは音源は持っているものばっかり!って声が聞こえそうですけど、テーマ曲のもと、あらためてベッテン目線で聴くと、番組での光景をいろいろ思い出しそう。
ナマならではの臨場感とか、歌手たちのコンディションやご機嫌までもが手に取るように分かったこととか、しみじみしそうな感じです。
ホントはDVDで出たら最高なんでしょうけど、今回はセット図など、当時を思い起こすブックレットや関連本(「 ザ・ベストテン―蘇る!80’sポップスHITヒストリー 」がオススメ!)を手にお楽しみください。
そういや聖子のライブでの20周年大メドレーはベッテンの映像がリンクして流れましたし、アルフィーなんかはベッテン映像で綴ったDVDも出てたはず。ああいうDVDなら実現の可能性は高そうですね。
ともあれ、出演者への思いやりや、出ないアーティストの主張がきちんと伝わるコメントなど、この番組イチバンの魅力は黒柳さんのお人柄に尽きるものだと思いますけど、それがいかにも善良な雰囲気だけに終わらなかったのは、久米さんのシビアで意地悪な物言いが絶妙のバランスを保っていたからのような気がします。その証拠に、司会が変わった後はなんだか急に違うムードになりましたもんね。
いま振り返ると、真の意味でテレビでの上質な音楽番組がなくなったなあと実感。ただ歌を聴かせるのでもなく、歌手をいじり倒すのでもなく。今こういう番組があれば、またみんなが同じように口ずさめるうたが生まれるのではないかと思います。今のヒットチャートにだって、いいうたや素敵なアーティストがいっぱい存在するんですしね。
ただ懐かしがるのではなく、そんな願いをこめて、このコンピを聴きましょうか。「この歌はベストテンではあのセットだったよね」とか「あの歌手、ベストテンではこう言ってたよね」とかいう言葉だけで、何十年経とうがすぐあの頃に戻れたり、全く知らない人同士でも盛り上がっちゃうような、そんな番組がまた始まって、次の世代がまた新たなうたの楽しみ方やうたを通じたすばらしい思い出の共有ができますように。
そして特番でいいから、「ザ・ベストテン」がひと頃みたいにときどき復活しますように。何よりトットちゃんがお元気なうちに。
(2009.3.6)
*CD「ザ・ベストテン」の特設サイトもあわせてご覧ください。
*続編として「
ザ・ベストテン 1986-87
」(PCCA-03049、¥2,500)、「
ザ・ベストテン 1988-89
」(UICZ-8071、¥ 2,500)、「
ザ・ベストテン 歌謡曲編 2
」(COCP-36227)、「
ザ・ベストテン スポットライト編 2
」(MHCL-1619、¥ 2,500)、「
ザ・ベストテン リクエスト編
」(VICL-63405、¥ 2,500)の5タイトルが2010年6月23日に発売。
こちらで紹介しています。