ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#1202
岡田有希子/7インチシングル・コンプリートBOX <アナログ盤>
2024.8.22発売、PCKA-00018、¥19,800<税込>  *9枚組7インチシングルBOX

幻のEPを含むヴァイナルBOX、生誕日に発売!

nojacket
 今年は1984年デビューの皆さんが40周年というアニバーサリーイヤー。84年組女性アイドルのトップといえば、4.21デビューのユッコこと岡田有希子さん。ということで、コアなファン向けの記念アイテムが登場します!
 なんと幻のラストシングル「花のイマージュ」を含む、7インチシングル全9枚をカラーレコードで復刻したコンプリート・ヴァイナルBOX「 7インチシングル・コンプリートBOX<カラーヴァイナル>」! ユッコのバースデイ8月22日にリリースされるそうです!
 
 ユッコのアナログ盤といえば、直近では12インチシングル「Summer Beach」( こちらで紹介)がリリースされたばかりですが、アレは海外で大人気となっているジャパニーズ・シティポップや、そのブームに火を付けた韓国のDJ・Night Tempが提唱する“ザ・昭和グルーヴ”の一環。
 ジャケットがユッコの写真ではなく、AIによって生成されたビジュアルということからも、コアなオールドファン向けのレトロな復刻商品ではなく、若いリスナーのナウな音楽シーンを意識して送り出されるトレンドアイテムでした。
 ただ、背景を知ってか知らずか、抵抗感を持ったファンも一定数おられ(ユッコの場合、最期のことがあっただけに、急逝当時から原理主義的なコアファンが目立った印象がありますし、その思考や気持ちは理解できますが)、今回は憤慨して不買宣言する方もいらした模様…。それでもオリコンでは、なんとデイリーチャート5位に初登場と、圧倒的な人気を見せつけました。
 
 しかし、今回は正真正銘、往年のファンをターゲットにした究極のコレクターズアイテム。発売中止となった「花のイマージュ」が、38年の歳月を超えシングルレコードの形でパッケージ化されるという事実だけを取っても、86年からピシャリと真空パックしてしまっていた気持ちはもとより、ファンとして抱えざるを得なかったの悔恨さえも昇華できるBOXといえるのではないでしょうか。
 
 ユッコのシングルは、かの渡辺有三プロデューサーをはじめ国吉美織ディレクターらポニーキャニオン勢はもとより、桜田淳子や松田聖子、早見優らの名曲群を送り出した原盤制作のサンミュージックのスタッフたちが手がけたとあって、群を抜く仕上がり。
 竹内まりや、尾崎亜美、かしぶち哲郎と、個性的な作家陣を起用して、戦略的なリリースを続けたのはご存じの通りですが、何よりユッコの上品かつ丁寧で落ち着いたボーカルの魅力の賜物といえるでしょう。
 
 1年目はA面を竹内まりやが担当した三部作。すなわち、圧倒的な大物を予感させたデビューシングル「ファースト・デイト/そよ風はペパーミント」をはじめ、キャッチフレーズをそのまま映したような第2弾「リトル プリンセス/恋のダブルス」、そして日本レコード大賞最優秀新人賞に輝いた「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして/気まぐれTeenage Love」という3枚で、理知的で可憐な少女のイメージを確立しました。
 
 2年目は、尾崎亜美に変えてより軽くポップに展開した「二人だけのセレモニー/PRIVATE RED」「Summer Beach/星と夜と恋人たち」と来て、ショートカットが話題となった「哀しい予感/恋人たちのカレンダー」で竹内まりやにいったん回帰。
 そして、かしぶち哲郎の話題作「Love Fair/二人のブルー・トレイン」で、楽曲的にも大胆なイメージチェンジを図ります。
 生真面目なユッコですから、何事にもガンバリズムが出てしまい、振り付けをとんねるずやシブがき隊らにイジられたことを思い出しますが、かしぶちさんとの相性には心底驚いたものです。
 
 そして3年目は、聖子+教授コンビという話題性と大型CMタイアップを冠した「くちびるNetwork/恋のエチュード」で、初のオリコン1位を獲得。
 急逝は誰にとっても寝耳に水、これから大きなステップアップが期待された矢先の出来事で、5月14日発売と告知されていた「花のイマージュ/秘密のシンフォニー」は発売中止。幻のシングルとなったとワケですが、当時、放送局には既にサンプル盤が届いており、ラジオを中心にヘビロテされていたことを思い出します。
 結局は後追いが相次ぎ社会問題となったこともあり、ファンの嘆願書もむなしく完全封印。99年3月に「メモリアルBOX」で日の目を見るまでは幻のシングルとなっていたのです。
 CD化は幾度となくされておりますが、今回は初のアナログ発売。感慨もひとしおですよね。
 
 という9枚のコンプリートBOXセット。カラーヴァイナル仕様で、マスタリング&カッティングはピッコロオーディオワークスの松下真也さん。音質的にも納得のパッケージになる模様です。
 
 最近は昭和ポップスや昭和アイドル好きのヤング層の間でも、評価が高まっているというユッコ。あの出来事を知らない人たちには、楽曲と才能に恵まれた伝説のアイドルシンガーとして純粋かつ正当に再評価されているように思いますし、このままユッコのうたが今後も聴き継がれていってほしいなと願っています。
 
 なお、ユッコの場合、全音源を収録したBOX「贈りものⅡ」がポニーキャニオンショッピングクラブの通販限定で再発売( こちらで紹介)されており、現在も入手可能。 音楽配信でも全曲がハイレゾ(96kHz24bit)対応で配信済みです。
 オリアルはEP盤サイズのダブル紙ジャケット仕様のUHQCDが単品発売( こちらで紹介)されていますし、ベスト盤も、竹内まりや提供作品集「Mariya’s Songbook」( こちらで紹介)をはじめ、EP盤のジャケット復刻ブック付きの「ゴールデン☆アイドル」( こちらで紹介)や、カラオケ付きの「ザ・プレミアムベスト 岡田有希子」( こちらで紹介)もまだ流通していますので、新たな若いファンに、ぜひ奥深く掘っていただけたらと思います。
 
 最後に個人的な話で恐縮ですが、ユッコと全くの同い年で誕生日も2日違いのワタシです。クラスメイト的存在の同世代アイドルの中でも、親近感がひときわ高かっただけでなく、ごく普通の星占いはもちろん、当時絶対的な支持を得ていた細木数子の六星占術でも同じ水星人(-)。
 生い立ちや性格的なことなど当時の状況を含め共通していると思える点が多く、コアなファンの皆さんには及ばないかもしれませんが、周囲のみならず自分でも驚くほど大きな衝撃を受け、その後も思い出すにつけ無常感や寂寥感など、いろんな感情にさいなまれてきました。
 ですから、ユッコと同じ18才だった自分が56才になってしまった今も、あの86年4月8日の出来事を振り返るたび、生涯忘れる事はないと実感しています。そして、どんなことがあっても自ら死を選ぶことを絶対に肯定することはありませんが、これまでの38年間同様、これからも現世で流れ続けるユッコのうたを聴くたび、生きることの意味を自問自答しながら、ユッコと同い年ゆえの人生というものをかみしめつつ歩んでいくのだろうという気がしています。
 

(2024.4.21)

 
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