75年のスタ誕、期待の大型新人!ついに初ベスト発売!
音羽の杜のキングレコードといえば、江利チエミやペギー葉山、三橋三智也に春日八郎、ザ・ピーナッツ、伊東ゆかり、梓みちよ、布施明などかつてのドル箱スターを擁した老舗。
講談社のもと、戦前から日本の音楽文化を支えてきた歴史と伝統あるレコード会社としておなじみですが、黄金時代が過ぎた後の邦楽では、どうしても演歌とアニメ系のイメージが強くなってしまいがちでした。
アイドルでは70年代、80年代前半ともになんとなくゾーンが外れていたようで、王道を進むメンツがほとんどいませんでしたよね。
80年代後期になってからは中山美穂を筆頭に、ちょっと毛色は違うけど紅白6回連続出場を果たした森口博子、ちょっと時代が下がるけど久々の筒美作品1位を記録した内田有紀らが大成功を収めますが、他社に比べて正統派アイドルの層が弱かったのは事実と言えるでしょう。
最近はお家芸であるオトナの歌謡曲系の秋元順子や、アキバ系アイドルのAKB48が人気を博すなど老舗の面目躍如を果たしているものの、そんな経緯からか、はたまた老舗特有のプライドなのか、メーカー合同企画のG☆Bにも参入しないし、ベスト盤は昔から年中行事である歌謡曲・演歌系の「全曲集」発売を淡々と繰り返すだけという感じだったのは事実です。
Q盤ブームの頃は復刻もある程度進みましたし、ザ・ピーナッツや江利チエミなど黄金期の素晴らしいリイシューはあるものの、近年は他社がさまざまなアイドル系復刻再発を繰り返してもスルーしていたのか、ほとんどその気配が見えなかったのですね。
ヤングポップス路線の純正旧譜を数えても、90年代のQ盤の音楽市場シリーズやキングCD文庫アーティスト・コレクションシリーズぐらいで、ベスト盤すら満足に出ていないという状況が続いていたのでした。
あれほど乱発されていたBOXでさえ、当然のミポリンのほかは、アイドル・ミラクルバイブルシリーズに突如入って延期の末発売された岩井小百合ぐらいしか見当たらないという具合で、キング所属だったアイドルのファンからは悲しみの声が聞こえていたものです。
しかし、ここにきて新たなベスト盤シリーズの一挙リリースがついに決定した模様。なんとあの小出広美とか、マッチのソックリさんといわれた新田純一とか、コアなアイドルマニアも騒然のタイトルが並ぶようです。さすが底力を持つ老舗ならでは、圧巻のラインアップとなっております。
中でも、個人的にオススメしたいのはやっぱり「スター誕生!」出身の情熱的な女の子、黒木真由美の「 黒木真由美 パーフェクト・ベスト
今ではインディアンルックとか、漆黒の肌の色とか、好奇心的インパクトだけで語られることが多くて、とっても残念なのですが、彼女はホントに大器だったと思うのです。
むろん感情線が乱れるくらいな個人的な思い入れもありますけれど、実際あの当時、おそらく誰もが売れることを予期し、そのムードがいっぱい漂っていたにもかかわらず、なぜか売れなかったんですよね。
あの人売れるはずだった伝説は、世にたくさん残っておりますが、たられば的な人とは異なる(と思う)黒木真由美。彼女のことを考えるだに、今もってキツネにつままれたような気分になってしまうのです。
もう35年も昔のことですが、このモヤモヤした気持ちを取り払うためにも、おぼろげな記憶を頼りに振り返ってみましょうか。
「スター誕生!」で結成された花の中3トリオ、その人気が爆発しトップに立ったのは74年のこと。番組もアイドル工場としての役目を認識したようで、3人に追いつき追い越せとばかり数多の合格者達を次々にデビューさせていました。
中3トリオと同じ手法で大きくクローズアップされたのは伊藤咲子、石江理世、小林美樹の3人。花の末っ娘トリオと名付けて大プッシュされましたが、今一歩であることはすぐに明白となっていました。75年に向け、起爆剤となる新しいビッグスターが求められていたであろうことは容易に想像がつきます。
そんな中、黒木真由美が登場したのです。
出身者の中でも、最も鮮烈で衝撃的だった彼女を、テレビ予選で初めて見た時のことは一生忘れられません。
純粋でつぶらな瞳、真皮まで漆黒ではないかと思える肌の色、きつくはねたこわい髪、怯えにも似た羞恥心がのぞく表情…。彼女はキュートではありましたが、それだけに終わらない、ギラギラした野性の魅力、生命の輝きに満ちあふれていました。
そして第11回決戦大会。黒木真由美は、かの岩崎宏美とともに出場。2人とも見事スカウト札があがりましたが、黒木真由美はマジでスゴかった。
何社だったか記憶が定かではありませんが、画面ではほとんどのレコード会社やプロダクションのプラカードが入り乱れた状態に見えたように思います。
審査員の先生もスタッフも、欽ちゃんもお茶の間の視聴者も、みんな黒木真由美の登場に新たなスター誕生を確信したのは、あの頃を知っている人ならばご存じのはずです。
岩崎宏美が、阿久先生言うところのスタ誕の良心ともいえる歌の上手さからグランドチャンピオンに輝いたのだとすれば、黒木真由美が審査委員特別賞を受賞したのは中3トリオ級のスターを望んでいた番組の期待を一身に集めたからこそ、と言えるでしょう。
それは、黒木真由美の楽曲を、スタ誕きってのゴールデンコンビ・阿久悠+都倉俊一両先生が担当したことでも分かるというもの。岩崎宏美は恩師・松田敏江(トシ)先生で、黒木真由美はベタ褒めした阿久先生という図式のごとく、阿久先生は黒木真由美にゾッコンで、淳子に書いて百恵ちゃんに書かなかったのと同じく、当初はヒロリンの楽曲制作とは無縁を決めていたといいます。
そしてキングレコードと小澤音楽事務所(アルト企画)の所属となり、75年3月25日に「好奇心」でスタ誕34組目となるデビューを果たした黒木真由美。
決選大会、デビューへと進むに連れ、自然児の野性はインディアンルックの愛らしいマスコット人形へと整えられていきましたが、各メディアでガンガンにプッシュされ、デビューコーナーで歌う姿を見ても、誰がどう見ても確実に売れるというムードが漂っていました。
しかし、そうはならなかった…。1カ月後にデビューし、変身度合いがスゴくてどんどんカワユくなってったヒロリンの影にかすんでしまい、第2弾では大きく水を開けられてしまったのです。スタ誕のプッシュもヒロリンへと傾いていった気がします。
それでも第1回日本テレビ音楽祭新人賞ノミネートに入ったあたりまでは、まだ成功を信じて疑わなかったんですけど…。
これはやっぱり、インディアン娘というキャラを作りすぎてしまったせいでしょうか。「好奇心」や6月25日発売の第2弾「感情線」はホントにいい曲だと思いますが、完全にルックスのインパクトに負けたというか、黒木真由美本来のキャラとは乖離してしまった感じだったのかもしれません。
その証拠に、黒木真由美を知っている人はかなりの数に上りますが、ちゃんと歌を覚えている人はとても少ないのですよね。あの貴ノ花と共演したエースコックのCMとか、ミョーにリアルでちっともカワユくなくて話題にもならなかった真由美ちゃん人形とかと同じく…。
とは言っても、キョーレツな個性が渦巻いていたあの頃にあって、インディアンルックは決して色物という感じじゃなかったし、リンリン・ランランのヒット曲を思い出すまでもなく、インディアンのマスコットやファンシーグッズはブームを呼んでいたし、カワユイキャラクターとして市民権を得ていたのです。
ワタシのような当時のチビッコから見ると、けっして奇抜な感じはしなかったのだけどなあ。それどころか、黒木真由美をテレビまんがの主人公か、アグネス・チャンに次ぐファンシー文具のキャラクターみたいなアイドルとして見てた子たちは周りにもたくさんいました。
ということは、逆に楽曲をインディアン寄りにして、阿久先生お得意のノベルティ歌謡にしたらよかったと言うべきか。
いやいや、当時の黒木真由美にはコンセプトやコスチュームに頼らなくてもいいほどの魅力があったのですから、それで売れたとしても納得はできなかったように思います。
結局はいったんリセットし、キャンディーズが解散宣言し、ピンク・レディーが飛ぶ鳥を落とす勢いだった77年10月、同じ事務所のスタ誕不発組・石江理世と目黒ひとみと一緒に、ギャルとして再デビュー。レッスンを積んだ成果もあって、すごいコーラスグループとなって戻ってきたのですが…。
と、黒木真由美のことになると、不完全燃焼が欲求不満やトラウマになって心の奥底に沈殿してしまっているせいか、とっても粘着質でネガティブなことばかり書いてしまいました…。ホントすみません。
さて、気持ちも落ち着いたところで、今回発売となる待望の初ベスト。とはいえ、彼女の場合、ベストより先になんと唯一のアルバム「 12のらくがき
意外でしょうが、これにはカラクリがありまして、山下達郎の初提供曲2曲(「恋人と呼ばれて」「北極回り」)が収録され、あのシュガーベイブや矢野顕子も参加しているのです。復刻されるまではレコードがとんでもないプレミア価格で取り引きされ、熱くCD化が望まれていたのも、実は達郎フリークのコレクターズアイテムだったことに起因するものでした。
この中には「好奇心/十五の素顔」「感情線/可愛い反抗」「神さまお願い/恋はゆらゆら」という3枚のシングルが入っていましたが、その後に出た「銀のめがね/のっぽがお似合い」と「まわれ風車/まだ夏なのに」は未CD化。こういう状態でしたので、まだ収録曲は発表されていませんが、今回のベストはようやくのリリースと言えるのではないでしょうか。
だって、ギャルの残りの2人、ミチヨは「 放課後
ということもあり今回のベストについて、ギャルファンの皆さんはお膝元であるキングからの発売に胸を膨らませる人も多いことでしょう。ミチヨ脱退後のシングル「誘惑されて/スーパー・スター」「黄金仮面/悪魔のように」や、アルバムに入っていたオリジナル「宇宙船GAL」「ギャルのテーマ」「フライング・ソーサー」が果たしてCD化されるのか、手に汗握り、固唾を飲んでいる人は多そうです。
個人的には、阿久さんのご寵愛は解かれた後の「銀のめがね」(ユーミンの「フォーカス」やドリカムの「眼鏡越しの空」へと続く近視系恋愛ソングのハシリ!なワケないか)がCD化されるだけでもウレシイんですけど、ワタシも皆さんと同様、大いに期待し予約して、ワクワクしながら発売を待とうと思っています。入らなかったとしても「バンザーイ、ナシよ!」ということで。
なお、パーフェクト・ベストシリーズとしてはほかに「 中山美穂 パーフェクト・ベスト
レッツヤン初代司会者だった有田美春とか、キングのこれからに期待している方は、是が非でも早めの行動、それもたくさんのタイトルのご予約をオススメします!
(2010.4.20)
*収録曲は、ソロで出したシングル&アルバム曲のコンプリートに、ギャルの全シングルA面(「薔薇とピストル」「マグネット・ジョーに気をつけろ」「誘惑されて」「黄金仮面」)の全20曲が予定されています。